鬼喰イ (ページ19)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:4,172 hit

9. ページ19

『壊さなきゃ……。悪夢の種は、ぜぇんぶ』

ここはわたしが望んだ世界だ。いつか夢見た、王子様がいる世界──。

誰にも壊させないし、奪わせない。

『……ふふっ、ふふ、ふふふ』

ちょっと魔法をかけてあげれば、ほら。壊れていた彼らも元通り。人形に取り付けられた糸で操るように動かせば、彼らは一様にレイピアを取って人間に向かって走り出す。

そのまま壊れてしまえばいい。この世界に、わたし以外の人間なんて必要は無いのだから。

「……残念だよ。ユメカワ」

背後から聞えた声に、わたしは振り返る。彼は王子様たちの猛攻を全てかわしたというのだろうか。

「自覚することで、逃げられたかも──」

この人間が何を言ったのか、最後まで聞き取ることが出来なかった。気付けば、わたしは砂の上に倒れていて、バラバラに壊れていく世界を見つめていた。

望んだ世界が壊れていく。

わたしにかけられた魔法が解けていく。

何もかも、なくなってしまう。
わたしが、冴えない私に戻っていく。

『いさ、きくん……。わた、し…………』

「ちゃんとかわいいよ。ユメカワ」

イサキくんが答えた。

『よか、た……。へへ……』

最期に聞こえた、「頂きます」にわたしは心の中で答えた。

どうぞ美味しく召し上がれ