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体調が優れないという理由で早退届を貰った私は荷物を取りに教室へ向かった。
授業が始まっている教室の中にはイサキくんの姿は無い。
もう居なくなってる……、そんなに授業が嫌なのかな。と思いながら机の中に入れていたファイルやルーズリーフ、筆記具をエナメルバッグにしまい込む。
前に座る友達が振り返った。
「早退?」
「うん。なんかだるくて」
「そっか、無理しないようにね」
うん、と返事をして教室を出ると一階に降りる。
昇降口を通り過ぎた先にある、渡り廊下を進んでいくと技能教科用の教室が並ぶ古い校舎が建っている。
今はほとんど使われることの無い校舎だが、昔は多くの生徒が行き来して、賑わっていたのかもしれない。
ドアが開けっぱなしになっている北校舎の中に入ると、すぐにイサキくんと鉢合わせた。
「……あれ?早かったね」
「あ、うん。早退することになったから」
「そう。じゃあ、ご飯食べながら話そ。この時間帯、腹減るし」
そう言って、イサキくんは私の手をとる。かなり冷たい掌に、肩がはねた。
元々体温あまり高くないから、と彼は言った。そうなんだ、朝は辛くない?と聞けば、姉貴に蹴り起こされるからイヤでも起きる、と答える。
「それで?怖い夢って?」
化学室のドアを開けながら、イサキくんが聞く。
「えっと、漫画雑誌のゆめるって、知ってる?それの大人向けホラーの
私は夢のことを話し始めた。
自分は白い砂浜の上を歩いていること、しばらくするとその作品のキャラクターであるクーヤという夢魔の王子が黒馬に乗って、現れること。
私は彼に殺された後、溶け込んで一つになってしまうことまでを話す。
「でもね、私が死ぬ寸前……クーヤ様の顔がおかしくなるの。なんていえばいいか分からないけど……私はそれがとても怖いの」
「そっか。じゃあ、これどーぞ」
差し出されたのはポスターだった。
学校非公式部活動「怪異部」と書かれている。
「俺が部長、部員も俺だけ。でも怪異のことなら必ず解決してあげる」
だから、安心して眠って。とイサキくんは言った。
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作者名:さっく。 | 作成日時:2019年4月22日 16時