305号室のユンギくん。3

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『…ヌナの……』

「え？」

『ヌナのポテトサラダ食いたい…。』

「う、うん、いいよ！
　じゃあじゃがいもとか材料買って帰ろっか！」





嬉しかった。
わたしのご飯が食べたいって言ってくれて。
本当はクタクタで作る気力もなかったけど、
ユンギくんのほっとした顔を見たら
やる気も元気もいっぱい出てきた。




アパートまでの帰り道、
ユンギくんが袋を持ってくれて
横に並んで歩く。

夢みたいだって、思った。
この前の気まずさが嘘みたいに、普通に話せてる。
ユンギくんは、わたしが思ってたよりも
何も気にしてなかったのかもしれないな。
この前の話を蒸し返すのも変だし、
このまま普通にしてよう。
好きとか嫌いとか、付き合う付き合わないで
モメたくない。
もういい大人なんだから。








「ちょっと待ってね、少し散らかってるから…」

『別に気にしねぇのに。』




出しっぱなしにしていたコスメや雑誌を片付けた。
気にしない、と言われても気になるんだよね。
ここ1週間、ユンギくんが家に来なくて
つい気が緩んで部屋の中がごちゃついていた。




『あ、』

「え、なに？」

『それ…』

「ん？」




ユンギくんの視線の先には
干しっぱなしの下着。




「あー！もう！なんで？！」




慌てて取り込んでユンギくんを睨むけど、
ケラケラ楽しそうに笑ってる。




『あーウケる…前にもあったな。』

「もー…なんでいっつもユンギくんは見るの…」

『見るつもりねぇよ、
　ヌナが干しっぱにしてるからだろ。』

「そりゃそうだけど……」

『洗濯物、片付けてていいよ。
　これ、皮剥いてたらいい？』




じゃがいもを持って聞いてくるユンギくんに
「うん、ごめんね、お願い」
と言って、洗濯物を畳んでいった。




ユンギくんは、何も思ってないかな。
わたしはさ、
こんな何気ない会話をできることに嬉しさを覚えて、
思わず泣きそうになったんだよ。






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