まるでドラマチック ページ8
ふわりと鼻先を擽った香りに思わず振り返る
「あれ?高嶋くん香水してんの?」
『え?あぁ、直人さん。すみません、匂いキツかったですか?…量の調節がまだ難しくて』
「んや、そんな事ないよ。高嶋くんから香水の香りすんのって初めてじゃねーかと思って声かけちゃった」
最近何かと話す機会が多い最年少は余り香水を付けていなかったと思う。ただ、今廊下ですれ違う際に香った香りは確かに香水のようで、意外だなっていうのと中々にいい香りだったから声をかけちゃったんだけど。
聞くとどうやら今付けてる香水は臣から貰った物らしい。
なにそれ、高嶋くんと臣の組み合わせとか想像出来ない!ってのが顔に出てたみたいでまたあの微笑みを浮かべてボイトレの時に話してたんだって教えてもらう俺。
年下に気を使われてる感じが否めないけど、それはまぁたまにはいいじゃんって事で俺もニッコリ笑う
『元は臣さんが付けてたものなんですけど、いい香りですねって話したら時間が無くて適当に付けたやつだからって…気に入ったんならあげるよって持ってきてくれたんです』
「なーるほどねー。それで持ってきちゃう辺り臣もマメね」
ああ見えて実は世話を焼くのが中々に好きな臣。岩ちゃんよりも若くて遠慮ばかりするこの最年少の事が彼もまた気になってるようだ。
だからって物で釣るのは良くないぞ!直人さんだって我慢して物で釣ってない…ていうか釣れないのに!中々この高嶋という男は釣れてくれないのよ!
なのに、臣から貰った香水を律儀に付けてきて余り付け慣れない所為で量が分からないとさっきからクンクン自分の手首を嗅いでる男の可愛いこと。
俺にもたまには物で釣られてよ!
「お、高嶋。何してんの?」
『臣さん。臣さんから貰った香水付けてみたんですけど』
「あぁ、さっそく?…本当だ。いい匂いしてんね。でもちょっと付けすぎな?」
目の前にいる男はどうやったら素直に可愛がられてくれるのか、一人悶々と考えてたらタイミングを見計らったかのように登場した臣に全て持ってかれた。
話題はやっぱりというか、さっきまで俺が話題にしてた香水の事で、さっきから高嶋くんの手を握って手首の匂いを嗅いでる臣はどことなく嬉しそうだ。そりゃ嬉しいよな、自分があげた香水を早速付けてきてくれてんだからさ。それが普段付けないって言ってる奴だったら尚更ね!
でもだからって目の前でイチャつくのはどうかと思う訳よ俺はさ!
44人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おにぎり | 作成日時:2019年9月25日 23時