【三代目】その先も【男主】 (ページ29)

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登坂広臣の場合ページ29

古くなり使えなくなったエフェクターの１つを片付けようと倉庫の脚立を引き出したところで背中から声を掛けられた莢嘩は一瞬肩を跳ねさせるも聞き慣れた声に目を丸くした。
自分一人で向かった筈が、何故ここに？素朴な疑問が顔に出ていたようで一人でふらっと抜け出す姿を見かけたから様子を見にきたんだと広臣は溜息混じりに返した。
何も自分一人でこなそうとしなくていい。俺を頼れと心なしか少し不服気な広臣に言われ遠慮はしたものの結局今は脚立に広臣が乗り脚立が揺れないよう莢嘩が押さえる体勢で落ち着いてしまった。

『結局片付けてもらっちゃって…すみません』

「これくらいなら幾らでも手伝ってやるから。一人でしない事。いい？」

『…これくらい、一人で出来ます』

「俺がさせたくないの」

『…どうして？』

いつのまにか片付けを終わらせて脚立の一番上に腰掛けた広臣に見下ろされてドキリとした。

「…聞きたい？」

『やっぱり、いい』

「いいから」

自分で聞いておいて、何となく広臣が言おうとしているのが分かってしまうのと、それに期待してしまっている自分に恥ずかしくなり莢嘩は目を逸らす。
そんな様子も分かってるとばかりに広臣は莢嘩の脚立を押さえていた手を少し強く引いて体勢を崩してしまった体ごと受け止めるように自分の腰へと腕を導いた

『やっ、だ…っ臣さ…ん』

「聞きたい？」

『臣さ…っ』

「広臣」

『…、広臣、さん…』

広臣の腰に抱き寄せられて動揺した莢嘩が身動ぎしてカシャンと脚立が少し鳴る。

「莢嘩の事を、愛してるから…危ない事はさせたくない」

『ぁ…っ、』

いつのまにか腰を折って更に距離を詰めた広臣に顎を掬われ至近距離で見つめ合う事数秒、先に我慢が効かず口付けたのは広臣であるもそれを甘受するように睫毛を震わせ熱を持った視線を向ける莢嘩も似たようなものだと広臣は笑い、唇を合わせたまま囁くように愛を紡ぐ。

登坂広臣の場合～fin～