勘違いもほどほどに-弐-【鬼滅の刃】

20 ページ20

逃げた導を軽く睨んでから、私を呼びながら歩き始めている竈門さん達と合流すると、嘴平さんはいきなり私を指さして、おい！と叫んだ。

突然のことにびくっと情けなく肩を揺らす私に、竈門さんは、伊之助、と彼を咎めるように言うが嘴平さんは変わらぬ勢いのまま私に食いついて来る。




「俺は嘴平伊之助だ！！お前の名前はなんだ！？」


『つ、栗花落Aですけど……あ、名前は存じ上げてました』


「めんつゆだく女！！」


『それ名前の原型ないじゃないですか』




一瞬耳でもやられたのかと思ったが、嘴平さんの雰囲気は一切巫山戯ておらず、本気で言っていることが分かった。

とは言いつつも、何故つゆだく？
栗花落のつゆから取ったのは、まぁ、理解したくないが分からなくもない。でもめんつゆって。めんって、何処から？




「伊之助！めんつゆじゃなくて栗花落Aだ！」


「あﾞ？かまぼこ権八郎は黙ってろ！！」


「だから俺は竈門炭治郎だ！！」




我妻さんを腕に抱えた竈門さんが反抗するように声を上げるが、嘴平さんは呼び方を絶対に変えない。
って言うか、竈門さんも変な呼ばれ方してたんですね……なら私も我慢しよう……。


行き場のない気持ちを溜息にして吐き出すと、先導して飛んでいた竈門さんの鴉がある家の前で止まり「負傷ニツキ完治スルマデ休息セヨ！！」と。

私は門に描かれている家紋をそっとなぞった。




『(藤の花の家紋……)』




蜜璃さんから以前聞いた話では、この家紋の家は鬼狩りに命を救われた一族であり、鬼狩りであれば無償で尽くしてくれるらしい。

こちらが助けたのは一度にも関わらず、助けてくれるのは一生。優しすぎる。

21→←19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す