私の恩人＊S・Sho＊ (ページ9)

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Episode 9 ページ9

『あれ？Aちゃんじゃん。』

俺はAちゃんの横に立って話かけた。

ちょっと、演技っぽく聞こえちゃったんじゃないかと不安になったけど、Aちゃんは気づかなかったようだ。

『あ…櫻井さん。おはようございます』

『お、俺のこと覚えててくれたんだ』

『なにいってるんですか。昨日会ったじゃないですか』

そういったAちゃんはにこやかに笑った。

…今日は元気そう。

今日は風もないし…長くしゃべっても大丈夫かな？

『ね、Aちゃんて、いくつなの？』

『えっ…？』

あ、いきなりこんなこと聞くなんて変態みたい？

『あ、私、17です。高校２年です』

『17かぁ～』

『櫻井さんは…いくつなんですか？』

『あ、俺は30。もうすぐ31。もうオッサンだね(笑)』

『オッサンじゃないですよ。櫻井さん、まだ20代に見えます』

『あ、マジ!?ありがとう(笑)』

…よかった、話が繋がり始めた。

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それから、俺達はいろいろしゃべった。

Aちゃんがこの地元の高校に通っていたこと、今は盲腸の治療をしていること、音楽が大好きなこと。

最近、人と全然話していなかった俺は、Aちゃんとしゃべって、すごく楽しいと思った。

Aちゃんもだんだん打ち解けて話してくれるようになった。

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それから俺達は何となく同じ時間に屋上に上がって、話すようになった。

ただし、雨が降っていない日だけ。

屋上で話し込む女子高生と三十路サラリーマンは注目を集めるらしい。

この前は医者に

『今日は雨ですから、木南Aさんとの密会はお休みですか(笑)』

と言われた。

『いや、密会なんかじゃないですよ～(笑)』

というか、なんでそんなこと知ってんスか。

と返すと、

木南さんは僕の患者ですから。と笑われた。

…盲腸の患者も、飛び降りの患者もひとりで治療するとは、医者は大変だと思った。

ちょっと感心して、医者のネームプレートを見てみた。

『二宮和也』とあった。

…二宮って事はこの病院の息子か。