私の恩人＊S・Sho＊ (ページ3)

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Episode 3 ページ3

『どうしたの？』

そう声をかけてきた男性が、私に近づいてきた。

もう一度、

『どうしたの？』

私はまた泣きそうになったが、人前ではあまり泣きたくない。

涙をこらえた。

『どなた…ですか』

うわぁ最悪。

わざわざ声をかけてくれた人にこんな対応をするなんて。

ほんと、人間が苦手なんだ、私。

『俺、櫻井翔っていうんだ。君は？』

『木南A…です』

『Aちゃんか。どうしたの？こんなとこで。風邪引くよ、そんな薄着じゃ』

『なんでもないんです…というか、櫻井さんのほうが薄着じゃないですか？』

『え？あぁ、俺はいいの、慣れてるから』

櫻井さんは少し笑った。

私は、泣いてることに触れられなかったことにホッとしていた。

そして同時に、世の中にはこーゆーひともいるんだ…と漠然と思った。

何だか嬉しかった。

『Aちゃん？どうしたの、ぼーっとしちゃって(笑)』

『あ、すいません』

もう一度、櫻井さんは笑った。

『じゃあ。俺はもう戻る。よく屋上来るから、また会うかも知れないね。じゃ！』

櫻井さんは私に背中を向けてあるきだした。

そのとき私は、櫻井さんが少し脚を引きずっていることに気づいた。

櫻井さんは、階段の手間で振り返り、私に軽く手を上げた。

私は、ぎこちなく、手を上げた。