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「 え? 」
どういうこと?と聞けば、さっきまでの涙の残りをぐいっと拭った小瀧くんは、深く決意したような顔をして。
『 このままじゃあかんなあって思ったんです。
僕、Aさんに付きまとってるだけやし、
Aさんにも無理矢理かっこええって言わせてしもたり、 』
「 それは、 」
本当にかっこいいと思ってたと言おうとしても、「いいんです」なんて小瀧くんの苦笑いにかき消された。
『 情けない姿ばっか見せて、Aさんに気を遣わしてる。
迷惑やないって言ってたけど、絶対困ってるやんな? 』
悲しそうに眉を下げた小瀧くんの目がわたしを捉えた。
わたしはもう首を振ることも出来なくて、ただそんな儚げな小瀧くんの表情をじっと見つめた。
『 Aさんに振り向いてほしいけど、無理させたないっていうか、 』
「なんつぅか」と頭をかいた小瀧くんはいままでとはなにかが違った。
わたしから一歩、いやもっと、遠くに行ってしまったような。
わたしはこれからわたしを好きでいてくれる小瀧くんに甘えることが出来ない。
そんな気がした。
『 Aさんと両想いになりたいんです 』
にこりと笑った小瀧くん。その笑顔の奥に何があるのか分からなかった。
『 だからもうこんなのは辞めます。
試合も呼びません。無理に逢いに来たり、帰り待ち伏せしたりしません。
Aさんが僕に逢いたいって言ってくれるまで待ちます 』
『 再来週の誕生日、やっぱり僕と合わないなって思ったら言ってください。
そしたら僕、もう諦めますから 』
そう言うと小瀧くんは、夕日に重なり見えなくなった。
なんだか別のように、遠くの方で小瀧くんの声が聞こえた。遠ざかった。
なんでだか、振られたように、胸が苦しかった。
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りぃな - この作品、めっちゃ好きです。小瀧くんの一人称がおれになるときが…何て言うか、やばいです (2020年10月24日 22時) (レス) id: 6d972d4f2d (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - えむさん» ありがとうございます〜!!遅くなってしまってすみません! (2019年1月22日 23時) (レス) id: dbd2bbadc1 (このIDを非表示/違反報告)
えむ - なんか、花男っぽいですね!たのしいです (2018年9月7日 20時) (レス) id: 3391b849bb (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - ミルキァさん» ありがとうございます〜!!アンチがいるんですけどそう言ってくださる方がいるだけで嬉しいです!(;;)ありがとうございました!! (2018年8月27日 19時) (レス) id: 6fd2095d8d (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - (さら)さん» ありがとうございます!続きは書く予定はありません(;;) (2018年8月27日 19時) (レス) id: 6fd2095d8d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楓花 | 作成日時:2018年6月10日 23時