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触れる唇。
わたしの唇を食べるように彼は何度も何度も唇を合わせる。
『 …ほんまはね、嘘やった 』
深い深い口づけの合間に、余裕そうな小瀧くんはわたしの頬に手を添えた。
『 送ったあと、Aさんとしたなんて嘘 』
雰囲気に呑まれそうになったけど、小瀧くんがそのままキスを続けるから、
少し強めに突き飛ばしてしまった。
「 …はあっ!? 」
「 は、なんで? 」
『 近付きたかったんやもん…! 』
ぷくって頬を膨らまして正座するその姿は、さっきわたしにキスしてた人だとは思えない。
「 …ばか 」
『 ごめん 』
わたしがどんだけ焦ったか。
またひとつため息をついた。小瀧くんといると、やたらと疲れる。
わたしは自分の唇をなぞって、小瀧くんから離れ、またエレベーターの奥へよりかかった。
「 …ねえ、小瀧くんってモテたでしょ 」
『 実は、
…僕、めっちゃモテました 』
「 だよね 」
すんごいどや顔で言われたけど、なんだか聞かなきゃよかったと心が思う。
小瀧くんは昔のバレンタインの話なんてしはじめて、
…あれ、わたし、上手く笑えない。
小瀧くんの話は面白いのに、全然楽しくない。
『 …そんでなっ、いっちゃん可愛かった子は 』
「 ねえ 」
『 はいっ? 』
「 …な、なんかやだ 」
わたしは自分でも言ってることが分からなくなって、下を向いた。
おかしい、こんなのわたしじゃない。
それでも心のなかのモヤモヤは言葉となって、溢れだしてく。
『 …へ? 』
「 …その話、あんまり聞きたくない 」
『 へ 』
彼の口はポカーンと開いて、わたしの言葉の意味を必死に考えてる。
「 小瀧くんに好きな人いたとか、なんか、そういうの、やだ… 」
わたしなに言ってんだ。
こんなんじゃ小瀧くんのこと、好きっていってるようなもんだ。
後悔して下をむいた時、
『 もう、あかん 』
わたしの腰を抱き寄せて、距離がグッと近くなる。
鼻が触れあうような距離で小瀧くんは食い入るように見てくるから、わたしは目をそらした。
『 かわええことばっかり言うのあかん 』
「 んなことない 」
『 んもう、それがかわええ 』
彼の前にハートがたくさん浮かんでる。
『 もっかいしてもええ? 』
わたしが答える隙もないまま、目をくしゃってして笑うと、また口づけた。
あれ、わたし、
わたしは、小瀧くんに堕ちた
…かもしれない。
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りぃな - この作品、めっちゃ好きです。小瀧くんの一人称がおれになるときが…何て言うか、やばいです (2020年10月24日 22時) (レス) id: 6d972d4f2d (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - えむさん» ありがとうございます〜!!遅くなってしまってすみません! (2019年1月22日 23時) (レス) id: dbd2bbadc1 (このIDを非表示/違反報告)
えむ - なんか、花男っぽいですね!たのしいです (2018年9月7日 20時) (レス) id: 3391b849bb (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - ミルキァさん» ありがとうございます〜!!アンチがいるんですけどそう言ってくださる方がいるだけで嬉しいです!(;;)ありがとうございました!! (2018年8月27日 19時) (レス) id: 6fd2095d8d (このIDを非表示/違反報告)
楓花(プロフ) - (さら)さん» ありがとうございます!続きは書く予定はありません(;;) (2018年8月27日 19時) (レス) id: 6fd2095d8d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楓花 | 作成日時:2018年6月10日 23時