檸檬

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机回りの整頓が終わり、
ミコトや夕子さん、ロクと別れて、
それぞれ帰宅する。



あー疲れたー…





肩をまわしながら、
歩いていると、


黒い車がすーっと私の横に止まった。






「お疲れですねー‟市ノ瀬さん‟」


「白々しいっすねぇ、‟木林さん‟」


「おい、どうでもいいから早く乗れ。」


「お久しぶりです。‟系さん‟。」









車に乗り込む、すーっと発進するや、
南雲が、口を開いた。







「例の件ですが、まだ見つかりませんね。」


「そうか。」


「アメリカでは何か、成果があったんですか、Aさん。」


「んーや。同じような症例は少なかったね。まぁ、ひたすら解剖件数伸ばしたくらい。まぁ、つってもまだ系さんにも追いついてないんだけどさ。」


「そうですか、それでは引き続き、探してみますね。」


「お願いします。」








車内の空気が静かになって、
南雲が、系さんの家に車を止める。








「お疲れさまです。」








そういうと、系さんは、少し考える素振りを見せて、
口を開いた。








「お前、家は？」


「え、あー…ホテル暮らしですね。今のとこ。」


「・・・段ボールどうした。」


「最小限に抑えて、今はUDIに置かせてもらってます。」


「・・・・・ウチ来い。」


「へ？」


「おら、行くぞ。」


「ちょ、ちょ、は？」


「お疲れさまです。それでは。」


「ちょ、ちょ、ちょ、おい！南雲！待て！」









私の声も届かず、南雲の車は行ってしまった。








「ほら、行くぞ。」


「えー…系さん、ガチですか。」


「嫌なのか。」


「いやいや・・・‟義兄さん‟ですし、嫌ではないですけど・・・。」


「じゃぁ、決まりだ。俺はどうせ、ほとんど帰らん。好きに使え。」


「・・・・ういーす。」(本当にそれでいいんか、この人は、)









合鍵をぽいっと渡される。


系さんの趣味とは思えない、可愛い猫のキーホルダーがついているのを見て、

はぁ、とため息をつきながら、


抗えない現実に、







また、肩が痛くなる気がした。

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