檸檬

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夕子さんは、あれからあの脅迫状が気になってるようだ。




「夕子さん、何かまずいことでもあるんですかー？」


「いや、ちょっとね。」


「まさか、心当たりが？」


「・・・・ま、まさかぁー・・・。」







一方、ミコトは、解剖結果を、
賠償金を払いたくない三銃士(ミコトの母がつけた)と
佐野さんの奥さんに説明をしている真っ最中だった。









結局ハッキリしたことは、検査の結果がすべて出ないとわからないため、
ただ三銃士がもめにもめて帰ったことだけをロクから聞いた。









「なんのために働くんでしょうねー…。」


「んー？そうだねぇ、人によって理由は、様々かなー。」


「工場が大変な時だからこそ、働くんだって、でもそれであったことをなかったことにされ、父親の死の原因もわからないまま。何とかなりませんかね。」


「解剖の結果が出ればまた話が変わってくる。それに、」


「？？」


「月140時間の未払い労働があった。その事実があるだけで胸糞悪いよ。」


「そうですね。市ノ瀬さんは・・・、」


「ん？」


「何で、臨床検査技師に、というか、法医解剖医になろうと思ったんですか？」


「んー…うちは、父親が医者だったから。ロクも同じでしょ、開業医の息子なんだって？」


「あー…うちは、医者以外人間じゃないと思ってるんで、」









気まずそうに言うロクに、そっか、と零す。
ロクは、気まずい空気をかき消そうと、







「でも、市ノ瀬さん、なんで臨床医じゃなくて、法医解剖医に？」


「・・・・んー・・・うち両親が離婚してんだけど、父親が家族を省みず働く人でね。」









母は、そんな父が嫌いだった。


自分より、娘より、
他人を優先する父が、







「でも、私は、幼いながらにそんな父をカッコイイと思ってたよ。」


「なんで？」


「だって、人の命を救ってんだよ？そんな誇らしいことないでしょ。」


「そうですね・・・。」


「でも、結局母には、わかってもらえず、母は姉を連れて家を出た。」


「・・・・市ノ瀬さんは？」


「私は、父が好きだったし、父を誇りに思ってたから、それに、父とよく似たこの顔を、あの女は愛せないんじゃなかったのかな。」


「・・・・・いま、お父さんは？」









死んだよ。

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