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十二話 ページ13

「あーっ、遅刻する!それじゃAさん、またね」

「う、うん。またね」

学校に向かってぱたぱたと走り去り、時折振り返っては愛想良く手を振ってくれる快斗くんの後ろ姿をぼんやり見ていた。
……さっきは私、なんてことを言ってしまったんだろう。思い返していたら鼻や耳まで熱くなってきた。
こちらを見て嬉しそうに微笑む快斗くんの姿と、抱きしめてくれた腕の感触、洗剤がふわりと香る男の子の匂いが頭の中で浮かんでは消えてを繰り返す。

もしかして、意識してるんじゃない?
快斗くんのことを、男性として。
そう考えて、勢い良くブンブンと首を横に振った。いやいや。ないないない。無いから。

確かに彼はまず顔立ちが整っているし、いい匂いがするし、私のことを沢山好きだって伝えてくれるけど。
まず、快斗くんと私の間には埋まらない年の差があるのだ。彼は高校生。私が彼の気持ちに応えた瞬間犯罪が成立すると言っても過言ではない。……多分。
それに、きっと彼には私より恋人にふさわしい女の子がいるだろう。それこそ、青子ちゃんとか。
そう考えた瞬間、頭の中に映像が流れる。今まで私に向けてくれていた太陽みたいな笑顔をした快斗くんが、違う女の子にその表情を向けて。幸せそうに手を取って、「好き」なんて言って。

「嫌、だな」

私の勝手な妄想なのに、その映像は心臓をきつく縛った糸のように締め付ける。

気付けば手に持っていたじょうろはすっかり空になっていて、花壇の花は水を滴らせて下を向いていた。そうか、水やりの途中だった。どれだけぼんやりしてたんだろう、私。

こんな形で気付きたくなかったな、なんて思う一方、まだ自分の気持ちには蓋をしていたいと感じてしまう。
だって、探偵助手というそこそこ危険な仕事に彼を巻き込む訳には行かない。それに、さっきも考えた通り年の差は絶対に埋まらない。だから、まだ。彼には気付かれたくない。
若気の至りだったって快斗くんが思い直すかもしれないし。

ぐるぐる考えたこの思考が全部言い訳だって、心のどこかではちゃんとわかっていた。怖いのだ、快斗くんの「好き」に甘えてしまうのが。

今の私を工藤くんが見たら呆れるだろうか、それとも笑うだろうか。
快斗くんが見たら、この間みたいに抱きしめてくれるのかな。

そっとついた私のため息を、朝の風が静かにさらって行く気配がした。




……
お久しぶりです。思い出したので続きをば。コメント返せなくて申し訳ない限りです、ありがたいです

十三話(お近付き編)→←十一話


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(プロフ) - 13ページのIQ300となってますがただしくは400ですよ (2021年3月8日 0時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
ルエ(プロフ) - 名前変わってますが作者です、更新ほっぽってた間に暖かいコメント頂いていてとても嬉しく思います。ありがとうございます(まとめてのお返事で失礼します) 飽きるまでは続きを書く予定ですのでこれからもお付き合いください! (2020年5月9日 12時) (レス) id: 04007d82f5 (このIDを非表示/違反報告)
規那 - 面白いです、この小説で怪盗キッド好きになりました!更新頑張って下さい! (2019年8月24日 9時) (レス) id: a7809f4044 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 好き!!!!!(挨拶)←好きです!!!!!更新無理せず頑張ってください! (2019年7月7日 19時) (レス) id: 447a13bfc7 (このIDを非表示/違反報告)
しおらん(プロフ) - 凄く面白いです!これからどうなっていくのか楽しみです!更新頑張って下さい! (2018年9月6日 14時) (レス) id: 097333551a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:猫乃 | 作成日時:2015年6月21日 4時

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