◆1617.腕力 ページ29
イヴ.
トレイ先輩からヤシの実を受け取ったツノ太郎くんは、両手でヤシの実を持つと、
バカァッ！！！
素手でその硬い皮を真っ二つにした。
フルーツから出たとは思えない音がした。
イヴ「ヒエッ……」
マレウス「ほら」
トレイ「……あ、ありがとう」
戸惑いがちにツノ太郎くんから真っ二つになったヤシの実を受け取るトレイ先輩。
そして渡されたスプーンで掬って果実を口に含むトレイ先輩。
トレイ「これがココナッツの果肉か。ヨーグルトを固くしたような独特な食感だ。加工されたものをお菓子作りに使ったことはあったけど、生は初めて食べるよ」
マレウス「ほう……そんな味がするのか」
イヴ「ツ、ツノ太郎くん、大丈夫？」
マレウス「この程度、造作もない」
『すごいツノ太郎！ 今の僕のでもう１回やってやって！』
イヴ「Aちゃん！？」
ナジュマ「私のも割ってください！」
ジャミル「こ、こら、ナジュマ！ それにA！ マレウス先輩をなんだと思っているんだ！」
マレウス「僕は別に構わないぞ」
そう言って、また素手でヤシの実を割っていくツノ太郎くん。
あの凄い音が２発も響いた。
背が高くてスタイルもいいなあ、とは思っていたけれど、その服の内に筋肉もあるのか。
どうやらツノ太郎くんは着痩せするタイプらしい。
グリム「マレウス！ オレ様のも割ってくれ！！」
イヴ「グリムくんまで……」
グリム「イヴも、頼んだ方がいいんだゾ！」
イヴ「え」
戸惑うと、ツノ太郎くんは「貸せ」と自信満々な表情で手を差し出した。
私は申し訳ないと思いながらも「……お願いします」とツノ太郎くんに自分のヤシの実を渡した。
ケイト「じゃあ、オレのも〜」
トレイ「イヴやケイトまで……」
ジャミル「マレウス先輩が、ココナッツを割る係になってしまうとは……」
トレイ「学園に戻って誰かに話しても、信じてもらえないだろうな」
その後、私達はツノ太郎くんの手によって真っ二つに破られたヤシの実の果実を食べた。
白くて柔らかい果実は、トレイ先輩の言っていた通り、ヨーグルトみたいな乳製品に似たような味がした。
『ジャミル先輩もツノ太郎に頼んで割ってもらいましょうよ』
ジャミル「そんな気軽に頼めるか！
……俺はいいよ。先輩に甘えられないしな」
『……ふーん。
僕は甘やかされたい。イヴに』
ジャミル「君はもっと自重しろ」
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作者名：冬雪
| 作成日時：2021年9月7日 0時
