◆1612.厄除け壺 ページ24
イヴ.
パン屋さんを離れた私達は、再び賑わいが絶えないバザールを歩いていると「あの青い壺ってなんだろ？」とケイト先輩がふと、足を止める。
イヴ「……壺屋さん？」
『骨董品を扱う露店に必ずと言っていいほど置いてある壺だけど、あの店には壺しかないな』
大小様々なサイズの壺が並べられている。
骨董品と言えるほどの雰囲気は感じられない。
トレイ「どんな用途で使う物なんだ？」
ジャミル「穀物やコーヒー豆、茶葉を貯蔵したり、花を飾ったり……色々ですね。そういった普段使いの容器のほかに、この壺は厄除けとしても使われています」
トレイ「厄除け？」
ジャミル「花火大会の伝承に出てくる青年が、追手から逃げ回っている時に、青い壺を被り、姿を隠して難を逃れたという言い伝えがあるんです」
ナジュマ「私達の家の前にも、この青い壺が置いてありますよ」
『そういえば、露店の他にも民家の玄関前に並べられているな、あの壺』
イヴ「あ、本当だ」
小さい子供なら難なく入れそうな程大きい壺が所々見つかる。
ナジュマ「外から来る悪い気を、跳ね除けてくれるって言われているんです」
グリム「こんな壺に、そんなすごい力があるとは思えないんだゾ」
『でも、ある地方では清められた塩でも厄除けの効果があるらしいからね』
グリム「ひょいっ！ ほいほいほいっ！」
『って、聞け！』
Aちゃんの話を聞かずに、民家の前に置いてある壺の上に立って、跳ねるグリムくん。
イヴ「グ、グリムくん！ その壺、そこの家の人の所有物だと思うから、勝手に遊んじゃダメだよ！」
ナジュマ「壺の縁に乗ったらダメだよ！ そんなことしていると、悪いことが、」
刹那、壺の縁の上で足を滑らせ、すぽっ、と中へと入ってしまったグリムくん。
グリム「うにゃにゃ！？」
ナジュマ「あ」
『あ』
イヴ「あ」
ケイト「グリちゃんが、壺の中に落ちちゃった！川に落ちたときといい、期待を裏切らないねぇ」
グリム「助けてくれ〜！ A、イヴ、オレ様を引っ張り上げろ〜！
『おお……壺が喋ってる』
壺の中で暴れるグリムくん。
壺が割れないように押さえ、Aちゃんがグリムくんを救出しようすると、「あまり甘やかすな」と厳しめなツノ太郎くん。
マレウス「熱砂の国の人々が大切にしているものを馬鹿にした罰だろう」
ジャミル「これに懲りて、もうイタズラするなよ、グリム」
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作者名：冬雪
| 作成日時：2021年9月7日 0時
