◆1609.タワーバケット ページ21
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『バゲットかあ……なら、サンドイッチ？』
イヴ「小分けにして何かを挟むっていうのも良いと思うよ。シンプルだけど、ポテトとベーコンを挟んだやつとかいいよね」
ナジュマ「Aさんとイヴさんもお料理するんですか？」
『うん。僕らだけじゃなく、ウチの学園は料理上手な奴が多いよ』
ケイト「そーそー！ウチのトレイくんも料理上手だしね！」
トレイ「ただケーキ屋の息子ってだけだよ」
談笑していると、グリムくんが食べる速度を落とし始める。
いつもなら食べ終えるまでその勢いは止まらないというのに、どうしたのだろう。
グリム「うー、食べても食べても全然なくならない……ウマいけど、飽きてきたんだゾ……」
イヴ「あらあら……」
ナジュマ「やっぱり〜。
このパンは、１人で食べるようじゃないんだ。みんなでちょっとずつ、分けて食べるの」
グリム「A、イヴ、残りを食べてくれ」
『僕らは君の残飯処理じゃないんだが？』
トレイ「仕方がない。俺達も一緒に食べてやるか」
イヴ「み、皆さんにご迷惑をかけるわけには……」
トレイ「いいって。正直、俺もこの国のパン食べてみたかったしな。ちょうどいいよ」
お兄ちゃんスキル、高すぎでは……？
トレイ先輩ってほんと、甘やかすの上手だなあ。
だからたくさんの人に慕われているんだろうけど。
ケイト「でも、この大きさのパンをそのまま食べたら、グリちゃんみたいに飽きちゃうんじゃない？」
ジャミル「それなら、店先にあるジャムを付けて食べてみてください。特産品がフルーツなので、それらの加工品も名物です。特にアプリコットジャムは有名です。すごく美味しいので、みなさんもぜひ。
はい、ジャムをどうぞ」
トレイ「なるほど、それじゃあ……」
ジャミル先輩からジャムを分けてもらい、バゲットに塗って、口の中に入れると、杏の甘みが口に広がる。
イヴ「……このジャム、とても美味しいです！」
トレイ「大きな杏が果実のままで、しっかりと残っていて、フルーティーだ」
マレウス「果実の酸味も感じるが、それにも増してとにかく甘い」
ケイト「そ、そんなに甘いの……？」
マレウス「あぁ。これはパンがすすむな」
何故かケイト先輩は、困ったような表情を浮かべた。
イヴ「(……あ、そういえばケイト先輩って、)」
甘い食べ物、苦手って言っていたような……。
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作者名：冬雪
| 作成日時：2021年9月7日 0時
