◆1590.伝統と革新 ページ2
イヴ.
私達の頭に巻かれたバンダナに飾られた白い花。
ジャミル「伝承では青年が姫君に贈った花とされていて、この花火大会のシンボルとなっています」
マレウス「だから、祭り用の衣装に、装飾されているのか」
ケイト「花火大会といい、ジャスミンの花といい、熱砂の国の人達ってなんだかロマンチックだよね」
伝承……熱砂の国の……。
ランプの魔人が、姫と青年の祝福に打ち上げられた光の輪……。ジャスミンの花。
ジャスミン……姫……。
グリム「イヴ？」
イヴ「！！」
グリム「どーした？ 暑いのか？ 汗がスゲーんだゾ」
イヴ「……なんでもない、よ……」
何かを思い出せそうだったけど、グリムくんに呼びかけられたと同時に何もかもが、頭から消えてしまった。
私は今、何を思い出そうとしたのだろう。
『……案外、伝統的だな。この国は』
ジャミル「そうだな。……この国では、様々な伝統や風習が大切にされている。例えば、��ヤーサミーナ河 花火大会��を彩る最後の花火の打ち上げは、代々、優れた職人にしか許されない栄誉ある仕事なんだとか」
ケイト「わあ〜ますますロマンある〜！ すっごく素敵だなぁ」
イヴ「……そうですね」
ジャミル「ですが、熱砂の国の真の魅力は常に最新をいく技術力にあると俺は思っています」
わぁ、今時の人の考えだ。
ケイト「どういうこと？」
ジャミル「この国の最も尊ばれているグレート・セブンの１人、��砂漠の魔術師��は、非常に聡明な人で、当時の技術をはるかに超えた機械をいくつも作り出したと言われています。中には、人工的に雷を起こす装置もあったとか」
イヴ「えぇっ！？ か、雷をですか！？」
『必要性……』
電気を起こすならわかるけど、雷を起こす理由なんてあるのだろうか。 やっぱりこの世界の偉人は何をしたかったのかよくわからない。
ジャミル「��砂漠の魔術師��を尊敬する魔法士や技術者を中心に、熱砂の国では積極的に最先端技術の研究や運用がなされてきました。それが熱砂の国の人々の生活をどんどん豊かにしていったのだと思います」
マレウス「確かに、熱砂の国に来てからは、驚かされることばかりだ。伝統と革新と共に歩んだ、熱砂の国の豊かさか……この賑やかな花火大会はその象徴ともいえるかもしれないな」
どこを見たって、熱砂の国は賑やかな国だ。
この暑さに負けないくらい、元気で、明るい。
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作者名：冬雪
| 作成日時：2021年9月7日 0時
