◆1589.伝承 ページ1
イヴ.
アジーム邸から西へと進むと、ジャミル先輩に開けた場所に案内された。
石の段差に所々綺麗な柄の丸いランタンが置かれており、１番上の段には大小様々なテントが設置されている。
マレウス「開けた場所に出てきたな。ここはなんだ？」
ジャミル「��ヤーサミーナ河 花火大会��のメイン会場です。��ラクダバザール��はこの先ですが、せっかくなので中の様子も見ていきますか？」
会場へと足を進めば、まだまだ昼間だというのに大勢の人で賑わっていた。屋台から香る食べ物の美味しそうな匂い、お祭りの準備で飛び交う声など。
『おっ。櫓もある』
グリム「なんなんだゾ、そのやぐらっていうのは？」
イヴ「お祭り特有のステージみたいなものだよ。私の元の世界では楽器を演奏している人や、歌を唄う人が立っていたよ。あと、有名人の人とか」
グリム「ふなっ、じゃあオレ様もあそこに立ちたいんだゾ！ 見晴らしも良さそうだし、将来的にオレ様も有名人になるわけだし！」
『ワンチャン邪魔って追い出される可能性の方が高いと思うぞー』
イヴ「邪魔しないようにしようねー」
櫓へと駆け出そうとするグリムくんを止め、ジャミル先輩達の方に向き直る。
にしても、この世界に��お祭り��という概念があるのなら櫓も存在するんだなぁ。建築方法は魔法だけど。
ケイト「まだ日が高いのに、結構人で賑わってるね」
ジャミル「熱砂の国を代表する、お祭りですからね。��ヤーサミーナ河 花火大会��は、とある伝承から生まれたお祭りと言われています」
『伝承？』
ジャミル「民のことを思う美しい姫と、貧しくも心優しい青年……身分の差を超えて、２人は永遠の絆で結ばれた。その愛を祝福するために、ランプの魔人が夜空に無数の光の輪を打ち上げたといわれています。その幻想的な光景は、見る者の心に深く残り、延々と語り継がれていったそうです」
イヴ「……」
『……』
ジャミル「やがて、姫と青年が結ばれたことを、熱砂の国の人々は花火で盛大に祝福するようになりました。そして今日のように熱砂の国の伝統行事となったのです」
ケイト「素敵な伝承だね〜」
……なんだろう
今の伝承、初めて聞いたのに、初めてとは思えない。 どこかで聞いた……いや、見たに等しいこの既視感。
ジャミル「それと、みなさんの衣装に、白い花が付いていますね。それは、��ジャスミン��という名の花です」
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作者名：冬雪
| 作成日時：2021年9月7日 0時
