125.愛された者 ページ34
加州.
石切丸「猫又。別名、仙狸。
長い年月を生きた猫がなる妖だね。凶暴な猫又もいれば主人を命懸けで守ろうとする献身的な猫又もいるようだ」
Aに擦り寄っていたAは猫又が化けた姿だったのだ。
今では牛乳を舌で一生懸命舐め掬っている。
鯰尾「俺が遠征に行っている間にそんなことが……俺もその光景見たかったです!」
加州「自業自得」
骨喰「主は?」
加州「今は自室で夕餉を食べてるよ」
あの騒動から少し経って徐々に熱が下がってきた主は食欲も戻ったらしくお粥をパクパク食べていたため一安心。
加州「(にしてもこの猫又、どこかで……)」
石切丸「この猫又、どうしようか?」
鯰尾「妖なんですよね?
なんならもう飼っちゃえばいいじゃないですか」
石切丸「妖を飼うのかい?」
石切丸達が話しているのを横目に、牛乳を飲み終えた猫又は俺の足元に擦り寄ってきた。
意外と人懐っこいな、と思いながら撫でていると、不意に襖が開き、今剣が猫又に目を向けた。
今剣「……やはり、そうでしたか」
加州「え?」
今剣「加州はきづきませんか?その猫又はぜんだいのあるじさまが、めでていたねこですよ」
鯰尾「!」
石切丸「!」
骨喰「?」
今剣は猫又を抱っこして、頭を撫でる。
猫又は気持ち良さそうに目を細める。
加州「あ……」
そして思い出す。
そうだ。
主に可愛がられて気に食わなかったから記憶が曖昧だったけど、よく主の膝の上に乗っていた猫だ。
金色の眼、傷ついた片耳。
今剣「このねこも、きっとりかいしているんでしょうね」
石切丸「前代がもう亡くなっていることをかい?」
今剣「ひさかたぶりですね。
きっと、あるじさまがもどってきたとかんちがいしたんだしょう。でもざんねんでしたね。もうあるじさまはいないんです。どこをさがしても」
すると猫は今剣の腕から飛び降り、部屋を出て行ってしまう。
今剣はその様子を寂しそうに見ている。
加州「……あいつは、前代の主を探しに来たんじゃないと思う」
今剣「……」
加州「心配だったんじゃない?だってあの人の孫だもん。そりゃ守りたくもなるよ。
人間は長い年月が経っても妖怪にならないし、簡単な病気ですぐ死んじゃうしね。猫もそれをわかっていたから、果物とかを持ち出したんじゃない?」
俺がそう言うと、石切丸はクスッと笑った。
石切丸「神からも、妖からも、人からも愛されているなんてね」
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戦国娘(プロフ) - 作品楽しみに読んでます!あと、一つ報告が.....一護ではなく一期一振というので正しくは一期です!! (2020年1月20日 0時) (レス) id: 008b2d0f5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬雪 | 作成日時:2019年6月15日 0時