【刀剣乱舞】妖物語 (ページ26)

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117.大和守安定の悪夢ページ26

大和守.

……これは、夢だ

瞬時に理解出来た。

上も下もどこを向いても真っ白でようなこの場所は夢としか言いようがない。

そしてこの夢を僕は何度も見ている。

目の前に、沖田くんがいるんだ

沖田くんは歩き出す。僕は追いかける。なのに追いつかない。走ったりしても追いつかない。何度呼びかけようと彼は止まったりしてくれない。沖田くんは前へと進んで行ってしまうのだ。

……そうやって僕を置いて逝くんだね

刹那、誰かが僕の袖を引っ張る。

振り向くと泣きそうな顔をした主がいた。沖田くんの方を見ると彼はもうどこにも居なかった。

「……主」

僕がそう呼ぶと、主は微笑んだ。

心臓のあたりがドキリと鳴いた。この気持ちはなんだろう。主は本当に不思議な人だと思う。

だって、こんなにも……

刹那、

「え……」

主が口から血を吐いた。

そしてそのまま崩れ落ちた。主の背中には深く斬られたような痕があって血を大量に流していた。突然のことに僕は呆然と立ち尽くしていた。

顔を上げると沖田くんがいた

血濡れた僕を持っていた。

沖田くんは不気味に笑って、言った。

「バーカ」

「……っ！！！」

勢い良く起き上がる。

身体中気持ち悪い汗まみれで、反吐が出そうだ。

なんて胸糞の悪い夢なのだろう。現実に引き戻されても光景が脳裏に焼き付いて離れない。

隣で寝ている筈の清光の方を見るとあいつはいなかった。まだ主の看病をしているのだろうか。

「(……主)」

主が熱を出してから二日経った。

なのに主の熱は治らないどころか下がったり上がったりする一方で、まるで、沖田くんのようだ。

沖田くんも、病気がなかなか治らない時があった。

僕は布団から出て、兼定と堀川を起こさないように静かに部屋を出ると空を見上げた。

空は月が浮かんでいた。

「(……死んだり、してないよね)」

……確かめないと

僕は主の部屋へと足を動かす。

あの夢が正夢にならないように、あの子が沖田くんみたいにならないように、また僕の主人が死んでいくのを見ないように、僕は確かめないといけない。

もう、嫌なんだ。何もかもと離れ離れになるのは。

自然と急ぎ足になる。やっと、人の身体を得たのだ人を助けられる身体を得たのだ。

見ているだけとか、知らなかったとか、手遅れだったとか、そうなる前に僕は、僕の主を助けなければいけない。

僕から離れないように、繋ぎ止めておかないといけない。

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