111.溝 ページ18
加州.
静かに眠るAを確認して障子を閉める。
「ご苦労さん、燭台切」
「はーい、んじゃ僕は厨に行くね」
我が主に粥を作るため厨に行く燭台切の背中を見送って、我が主の寝顔を覗き込もうとする恩知らずの鯰尾の頭に手刀を落とした。
「コラッ」
「気配を消していた筈なのに……流石ですね！加州さん！」
「兄弟は懲りないな……」
すると水が入った桶を持った骨喰がジト目で鯰尾を見る。当の本人は本当に懲りていないようで「てへぺろっ」と舌を出した。本当に懲りない奴だ。
「いやでも考えてみてくださいよ、荒い息、汗ばむ肌、火照た頬、弱りきった主はそれはそれで興奮しません？」
「……骨喰、主が寝込んでいる間はコイツが審神者部屋に近づかないように四六時中見張ってて」
「承知した」
「なんでよ！！」
プンスコと怒る鯰尾は全く可愛くない。
一体どこで育て方を間違えたのだろう。年頃の女の子がいるため、これはしっかり教育的指導を考えなければいけないということだ。面倒である。
「……風邪を引くところを見ると、やはり主も人間ですね。嘆き苦しんでいる刀剣男士に手を差し伸べる程肝が座って意志が強い人ですけど、熱を出して倒れてしまえば可哀想なくらい無力になってしまいますよね」
「……」
「主は藤四郎兄弟の事情に土足で踏み込み、そして出来た溝を知らないうちに修復していくんです」
「アンタ達に溝なんてあったんだ」
「そりゃありますよ。前代が死んでから全てがおかしくなって狂ってしまったんですから」
「兄弟……」
「でも、今の主が来てから怖いくらいに変わった。こんなにも幸せと思うのは久し振りでした」
鯰尾は審神者部屋の障子に手を当てた。向こう側で眠るAに微笑むように障子を見つめた。
「人任せにして申し訳ないと思っていますけど主は俺達兄弟の溝を逃げ場がないくらいに埋めて、俺達兄弟の仲を修復してくれることに本当に助かっているんです」
「鯰尾……」
「熱で倒れたとしても、どうせまた、知らないうちにあの子はその溝を埋めてしまうんですよね。嬉しいですけど、少し妬いちゃいます」
「兄弟……」
それはどっちに対してなのだろうか
あの子にか
兄弟にか
どちらにせよ、妬いても仕方ない。
あの子はみんなのあの子だ。独り占めは許されないのだ。
「……あ、近侍になれば寝顔見放題……！？」
「鯰尾、いいこと思いついた、みたいな顔すんな」
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戦国娘(プロフ) - 作品楽しみに読んでます！あと、一つ報告が.....一護ではなく一期一振というので正しくは一期です!! (2020年1月20日 0時) (
レス) id: 008b2d0f5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年6月15日 0時
