【刀剣乱舞】人物語

81.強くて優しい人 ページ35

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「なにやら情けぬ声が聞こえたと思ったら主殿だったか」


頭上から私を覗き込んだのは山伏さんだった。

まさかそんなに情けない声だったとは恥ずかしい。しかしこちとら異性に抱き締められたことないのだ仕方ない。


『……情けない声を出してしまい申し訳ありませんでした』

「別に拙僧は気にしておらんぞ？ただ普段の主殿から想像出来ない声であったぞ。どこから声を出しているのか疑問になる程珍しい声だった」

『……人間、変なテンションになると誰でもどこから出しているのかわからない声を出せるのです』

「成る程！人間とはやはり面白い存在だな！」


今後、変な声を出さないように心掛けよう


『えっと……山伏さん、私に何か御用でしょうか』

「おお、そうであった！」

『？』


すると何故か山伏さんはその場に土下座した。


『え』


突然の事に私は山伏さんの後頭部を呆然と見ていると山伏さんは震えながら話し始めた。


「二度も兄弟を救ってくれたこと、感謝する」

『え、あ……ど、どういたしまして』

「人間など……皆同じだと思っていた……ただ拙僧は兄弟達を不幸にする人間が許せなかった……っ」

『……山伏さん』

「それでも、主殿は折れた兄弟を治し、穢れた兄弟と向き合い、挙げ句の果てには政府から兄弟を守ろうとしている……！お主になんと礼を言ったら良いのか拙僧は……っ」

『そ、そんな深々と頭を下げないでください！わ、私だって貴方達に救ってもらってばかりで……』


咄嗟に私も土下座してしまう。


「主殿……」

『堀川さんのこと知れたのも貴方達のおかげで……堀川さんと向き合えたのも貴方達が背中を押してくれたおかげで……結局私は貴方達がいなかったら何もできないただの凡人なんですよ』

「それは違うぞ主殿」


顔を上げると、山伏さんは穏やかに微笑んでいた。

すると山伏さんは私に手を差し出した。その大きな手に私は手を乗せると、その上に山伏さんの片方の手が重なる。その手はやはり冷たかった。


「お主は、誰よりも強くて優しいのだ」

『そ、そうでしょうか？』

「穢れることを恐れなかった強さに絶望の底に堕ちていた兄弟に手を差し伸べる優しさ」

『(そこまで言われると照れるなぁ……)』


何故刀剣男士はこうも恥ずかしい言葉を平気そうに言えるのか。謎で仕方ない。


「だから、主殿……どうか、ずっと変わらぬままでいてほしい。闇に呑まれることなく、ずっと」


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