71.何が正しいのか ページ25
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呆然と、縁側に座っていた。
どうやって国広部屋から出たのかも忘れてしまったし、どうやってここまで歩いて来たのかも忘れてしまった。
誰も報われない
『(本当にそうなのかな……)』
部屋で宿題でもしようかな、と思い立ち上がろうとすると突然、どこからともなく誰かが降ってきた。
長い黒髪と浅葱色の羽織をたなびかせ、上から降ってきた男の人は腕を組んで私を見据えた。
『……和泉守さん』
「おう」
『ど、どこから』
「屋根から」
『な、なにゆえ……』
「屋根走った方が早えんだよ」
刀剣男士の発想が時々理解出来ない時がある。
にしても本当に綺麗に着地したものだ。地面から屋根まで二メートル以上あるというのに大したものだよね。
『えっと……何か、御用でしょうか』
「……嬢ちゃんは、国広をどうしたいんだ?」
『えっと……どの、国広さんでしょうか』
「あ?……あーっと……ピアス付けてる方だよ」
『堀川さん?』
「そうそう、その国広」
そういえば和泉守さんと堀川さんは元の持ち主で、土方歳三の刀だったということで相棒だと聞いたことがある。
相棒を気にかけるのは普通のことだよね
「言っとくが俺とあいつは他の本丸とは違って相棒だと思っちゃいねぇからな」
違った
『違うんですか!?』
「あんな奴、相棒でもなんでもねぇよ」
『で、でも……』
「いいか?嬢ちゃん、俺はどんな境遇に立っても前向きで強い奴が好きなんだよっ」
『堀川さんは強いですよ……?』
「それは物理的にだろ。今のあいつは強くねぇよ。てか、あの屑が居た時の方がまだ良かったよ」
『(あの屑って……三人目のこと……)』
「国広は屑のために頑張って、前向きで、誰よりも努力して、そりゃあ誇れる奴だった。でも今のあいつはズルズルズルズルと屑に対する未練を引きずって、あの屑にぶつける筈の恨みやら殺意を嬢ちゃんにぶつけている」
『和泉守さん……』
「あんなの国広じゃねぇよ!俺はあの屑も嫌いだが今の国広も嫌いなんだよ!」
すると和泉守さんが私の胸ぐらを掴み、力任せに私を引き寄せた。
「……なぁ、教えてくれよ。嬢ちゃんが来てから、俺は、わかんなくなっちまったんだよ……」
『……和泉守さん……っ』
「淀んでいた空気が澄みきって気持ち悪りぃ。赤く見えていた月が黄色く見える。霞んでいた視界が明るくなって、何が正しいのかわかんなくなっちまったんだよ!!」
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冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい!楽しみにしてます!! (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬雪 | 作成日時:2019年5月20日 21時