63.傷痕 ページ17
骨喰.
『損傷した瞳が治せないのも、抱きたくもない不信感を抱かせてしまうのも、傷つけてしまうのではないかと不安を抱かせてしまうのも全部、私が貴方達を傷つけているから』
「違うっ！……これは俺が悪いんだ」
『貴方を生かしてしまったのも私のせい』
主の言葉にドクン、と心臓が鳴る。
主の顔を見ようと顔を上げれば、涙は止まっていたが下を向いて自嘲気味に笑みを浮かべていた。
『貴方は人間になってしまったんです。人間は触れただけで傷ついたりなんかしませんよ』
「しかし……」
『触ってみてください』
そう言って主は手を差し出す。
俺は恐る恐る手を伸ばす。指先から触れ、滑り込むように主の手を握ると主は俺の手を握り返した。
刹那、主の霊力が一気に流れ込んでくる。
柔らかくて和やかな霊力。主を見れば優しい笑みを浮かべていて、俺は自然と涙が出た。
「……こんなにも温かいものなのだな」
『触れるなんて全然怖くないんですよ。たしかに自分と違う存在に触れるのは怖いことかもしれないけれど、私と貴方達刀剣男士は人間でないようで人間なんですよ』
「……人になることは、難しいんだな」
『じきに慣れますよ』
��人��になってしまえば��炎��で簡単に燃えてしまうだろう、と口に出そうとしたがやめよう。そうしてしまえば主は本当に困ってしまうだろう。
慣れて仕舞えば問題ないのだろう。
俺は主の言葉を信じよう。��人��である彼女を信じていこう。
「……あの時はすまなかった」
『あの時？』
「俺が顕現された日のこと、厨でのこと。俺はあんたの手を振り払ってしまった」
『……え？』
「……？」
『厨のことはわかりますが……そんなことありましたっけ』
「……忘れたのか？」
『鯰尾さんに��過去を振り返るな��と言われているので』
……なるほど
俺が悩んでいたことを兄弟はいとも簡単に水に流していたようで、俺は一気に脱力した。
そして可笑しくて笑いが吹き出す。本当に兄弟は面倒見がいい奴だということだな。
「はは……っ」
『骨喰さん？』
「��嫌われているのかと��」
『！』
「そう、思っていた」
俺がそう言うと主は一瞬きをした後、笑った。
花が咲いたようなとか、太陽のようなとか、玉を転がすようなとか、そのような言葉では表せない。
それほど、主の笑顔は綺麗で、俺の脳裏に炎のように焼き付いて火傷のように痕になった。
『私も、同じことを思ってました』
.
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冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (
レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい！楽しみにしてます！！ (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年5月20日 21時
