79.尊い ページ33
堀川.
「……まったく貴女って人は」
『ご、ごめんなさい！』
「取り敢えず本部に報告しなければいけませんのでボクは一旦戻らせてもらいますね」
『あ、お見送りをしますっ！』
意識が戻って次に聞こえたのは主さんとこんのすけくんの声で、障子の音が聞こえた後、一人と一匹は廊下に出たのか、足音が遠のいていくのがわかる。
目を開けると木目の天井で、僕は布団の上でいつの間にか寝かされていた。
「気分はどうよ」
「……兼さん」
振り向くと胡座をかいて頬杖をつく兼さんが居た。
「んー……普通、かな」
「そうかよ」
「……主さんは？」
「お前より先に目ぇ覚まして政府の管狐に叱られたとこだ」
「……なんか、言ってた？」
「��早急に刀解するべき��だってよ」
そりゃそうだ。一度穢れた刀剣男士は治ったとしても後遺症が残ると言われている。またいつ穢れが発症するかわからないから早急に刀解した方がいい筈なのに僕はまだ生きている。
まず身体があって、髪があって、顔があって、目や鼻とかがあって心臓とかの臓器がまだ僕の中で正常に動いている。
「僕は……生されているんだね」
「そう簡単には命を捨てられなくなっちまったな」
「難しいなぁ……戦でいつ命を落とすかわからないのに」
「前代が言ってたんだけどよ、命は尊いんだと」
「それは人間にとってでしょ？」
「俺もそう思う。でも前代は俺達をも含めて尊いと言った。生きている者は平等に命があり、例え神様でも命があるのなら全て尊いんだと。元が物だとしても付喪神であるお前達は神様なのだから尊いんだとな」
「……じゃあ、僕達も尊いの？」
「そうだ。だから無駄にはしちゃいけねぇんだ」
僕達が尊い存在だと言うのなら、僕らは簡単に死んではいけないという絶対的な決まりを主さんに押し付けられたようなものだと僕は思う。
人間だって、辛かったら自分で死んじゃうのに。
人はそれを無駄にしてはいけないと言う。矛盾している。
「……まぁ、お前はお前ということに変わりないんだから」
「？」
「いつもみたいに��自称俺の助手��とでも名乗ってろよ」
そう言った兼さんの顔は穏やかだった。
変わった。全てが変わった。あの人のおかげで僕も変わったし、兼さんも変わった。
「おいおい、男が泣いてんじゃねぇよ」
「……だって、」
こんなにも嬉しいんだもの
.
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冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (
レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい！楽しみにしてます！！ (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年5月20日 21時
