2.加州清光 ページ4
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『(結局遅刻してしまった……)』
終業式が終わり、明日には春休みだというのに私の気分は晴れないままなのでした。
「A大丈夫だったの?交通事故に遭いそうになったって聞いたのだけれど」
『この通り無傷です。ご心配をおかけしました』
「本当だよ〜!無遅刻無欠席のアンタがいつまでも来ないから心配していたんだよ」
『……無遅刻無欠席』
「あ」
『今日遅刻しなかったら皆勤賞だったのに……』
鬱だ。椅子の上で体育座りをして膝に顔を埋めれば幼馴染が頭を撫でてくれるのがわかる。
「ほら元気だしなって。あと1年残ってるんだから新学期頑張ればいいじゃん。それより春休みはカラオケとか行って日々の鬱憤を晴らそうじゃん?」
『……そうだよね。じゃあ一緒に帰ろ』
「あ、今日は無理。彼氏待ってるから」
『え』
「じゃね」
……幼馴染に見捨てられました
どうせ私は独り身だよ。寂しい女だよ。そんな風に自虐しながら靴を履き替えて正門を出た時だった。
「おかえり」
『え』
右を向けば学校の塀に背を預けて居たのは今朝私を助けてくれた綺麗な容姿の男の人だった。
『(……なんでいるんだろう)』
「学校終わった?」
『は、はい!』
「そ、なら帰ろっか」
そう言って歩き出す男の人の後ろをなんとなくついて行くけれど私はある事を思い出した。ついて行かずに立ち止まると男の人も止まって振り向いた。
「どうしたの?」
『し、知らない人にはついてっちゃダメと教えられたので』
「知らない人?あ、そっか会ったのはアンタが赤ん坊の時だから覚えてるわけないか」
『え?』
「俺は加州清光。はい、これで俺はアンタの知ってる人になったんだからいいでしょ?」
『えええぇぇぇ……』
「はいレッツゴー」
『いやレッツゴー出来ませんから!』
傍にあった木にしがみつけば強引に引き剥がそうとする加州さんに対抗を試みるが男女の力量の差とは悲しいもので容易く私は木から剥がされた。
「よっ、と」
『な、なんで担ぐんですか!?』
「だってアンタ暴れるんだもん」
今日は厄日か
男の人に担がれる女子高生。なんて面白くて滑稽な絵面だろう。しかしすれ違う人々は私達に見向きもせず通り過ぎて行く。加州さんが見えないのはわかるけれどまさか私も見えないというのだろうか。
「あ、安心して。アンタは俺に触れられている以上誰もアンタの姿を認識できないから」
『(……どういう仕組みなんだろう)』
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ぬっこ(プロフ) - 胸から刀を出すと言う表現がとても素敵です。続き楽しみにしてます(^-^) (2020年1月15日 21時) (レス) id: da10b377d5 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 紫鶯さん» ありがとうございます。続きをお楽しみください。 (2019年5月16日 20時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - とっても面白かったです! (2019年5月16日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬雪 | 作成日時:2019年4月29日 9時