22.治してあげる ページ24
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『そっか、君が五虎退くんだね』
「！」
『加州さんから教えてもらってたんだ』
私は虎を抱き上げて五虎退くんの元に歩み寄る。
五虎退くんは刀を構えたけれど私が虎を抱いているからか下手に動けないのだろう。しかし私はそんな風に動物を利用しないし考えたことなんてない。
『盗ったりしないよ。盗られるのって悲しいからね私はその気持ちわかるんだよ』
「……本当に？本当に盗らない？」
『うん。それより私は君の手入れがしたいな』
そう言うと五虎退くんは刀を降ろし、その場に座り込んでしまい嗚咽を漏らしながら静かに泣く。
『ところで加州さん、治すにはどうすれば……』
「だーかーらー霊力で治すの！」
『出し方がわかりませんって！』
「んじゃ刀を直接触るとか」
『刀？こうですか？』
五虎退くんの刀に触れた刹那、大量の桜吹雪が舞ったと思ったらその桜は五虎退くんを取り囲む。
それは一瞬の出来事だった。
五虎退くんを取り囲んでいた桜は五虎退くんの傷に触れて染み込んでいくように傷を癒していく。
「……あれ、痛く、ないです」
『これが手入れなのですね！加州さん！』
「若干俺が想像したのとは違うけど……まぁ、治ってるならそれでいいんじゃない？」
ボロボロだった刀も今では私の顔が映るくらい綺麗で水に濡れたように透き通ってる。
刀剣男士も奥が深いが審神者も奥が深い。これを彼らは魔法とは呼ばず��霊力��と呼んでいる。
「痛くないの……久し振りです」
『また痛くなったら言ってね？治してあげる』
「え……いいんですか？」
『え、だって刀剣男士の傷は審神者しか癒せないんだよね？この本丸には私しか審神者がいないし』
「迷惑とか……」
『思ってないよ？痛いのは私だって嫌だし治せるのなら誰だって治してほしいもん』
私がそう言うと五虎退くんは私をじっと見ながら涙を流した。
そういえば五虎退くん、春休み前の日、私が説明を受けた時いなかった気がする。
『五虎退くんはいつからこんな傷……』
「貴女が……加州さんに、連れて来られる前から、です」
『え！？な、なんで早く言わなかったの？言ってくれれば治してあげたのに……』
「…….政府から派遣された審神者様は治してほしい時に治して、くださらなかったので……」
『え……』
政府から派遣された審神者は本当に審神者だったのだろうか、と一瞬疑ってしまうくらい残酷だった。
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ぬっこ(プロフ) - 胸から刀を出すと言う表現がとても素敵です。続き楽しみにしてます(^-^) (2020年1月15日 21時) (
レス) id: da10b377d5 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 紫鶯さん» ありがとうございます。続きをお楽しみください。 (2019年5月16日 20時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - とっても面白かったです！ (2019年5月16日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月29日 9時
