18.さようなら ページ20
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「でも……もう、ダメみたい」
消える。消えてしまう。
伝えたいことが沢山ある筈なのに言葉が出てこなくて、胸の奥が締め付けられるように痛くて苦しい。
「ねぇ、清光」
「！」
「私、あの人に怒られてしまうわね。だって運命に従わず現実から目を背けてしまったのだから」
「……婆さん」
「……Aちゃん、泣かないで？貴女はもう高校生でしょ」
高校生だって泣きたい時がある。
床に涙が落ちていく。これが一生の別れだと言うのなら私は悲しくてたまらないし、ただでさえ忘れっぽい私がいつかお婆ちゃんの顔すら忘れてしまいそうで怖いのだ。
『……こんなのってないよぉ……っ！』
「幽霊になったのは不幸せだけれど少し大人になった貴女と少しだけ過ごせたのは凄く幸せだった」
『やだ、お婆ちゃん消えないで……！お願いだからもう……私のこと泣かせないでよ……』
「貴女は何度も傷ついて何度も泣くだろうけど頑張れば嬉しいことがあるし生きていれば幸せになれることだってある」
お婆ちゃんの手が私の頬を包むけれどその手も消えてしまう。幽霊はなんて儚い存在なのだろう。こんなにも綺麗で透き通って消えていくなんて。怖いと思っていた自分が馬鹿のようだ。
「会えてよかった……もう会えないと思っていたから……でももう会えない」
『お婆ちゃん！！』
「大好きよ、A。ずっとずっと見守ってる」
消えてしまう。だから手を伸ばした。けれど消えてしまった。
祖母の残骸のような光が落ちていく桜の花びらのように見えて、とても綺麗で、私は涙を止めることが出来なかった。
『ああぁぁ……ああぁぁああ……！！』
大きな声を出して泣いていたのは私だけだった。
消えた筈の暗闇がまた私を支配する。
私も大好きだと言いたかった
我儘言ってばかりで、私はどうしようもないくらい子供で、何一つ大人になれていないのに祖母は��少し大人になった��と言ってくれたのだ。
「……戻ろう、本丸に」
『加州、さん……っ』
「婆さんは消えたんじゃない。還ったの」
『……私が、私がもっと大人になるのが早かったらお婆ちゃんはもっと安心出来ましたよね……？』
「さぁ？それはわからない。でもアンタは大人になるよ」
加州さんが私に手を差し出す。
闇が消えていく。涙でぼやけた視界がクリアになっていく。
私は加州さんの手を握った
こうしてやっと、長い長い一日が終わったのです。
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ぬっこ(プロフ) - 胸から刀を出すと言う表現がとても素敵です。続き楽しみにしてます(^-^) (2020年1月15日 21時) (
レス) id: da10b377d5 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 紫鶯さん» ありがとうございます。続きをお楽しみください。 (2019年5月16日 20時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - とっても面白かったです！ (2019年5月16日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月29日 9時
