17.涙と涙 ページ19
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「……Aちゃん」
聞きたかった声。
顔を上げると優しい笑みを浮かべてお婆ちゃんがそこにいた。
『……お婆ちゃん？』
「ありがとう……よく頑張ってくれたね」
お婆ちゃんは私と同じ目線になるように座って私の頭を透けた手で撫でてくれる。私は堪らずわあわあと泣きながらお婆ちゃんに抱き着いた。
「ごめんね？怖い思いをさせてしまって……」
「……婆さん」
「あら、清光……それに薬研も厚も鯰尾もにっかりも小夜、久方振りじゃない」
やっぱりお婆ちゃんは知っていたんだ。
刀剣男士のみんなを見れば嬉しそうに笑う人も泣きそうな顔もいて、やっぱりお婆ちゃんが前の主だったんだ。
『やっぱりお婆ちゃんがみんなの前の主なの？』
「私？私は違うわよ」
『え』
「前の主は」
「婆さん」
「え……」
お婆ちゃんが言おうとすると加州さんがそれを止めてしまった。加州さんが首を横に振るとお婆ちゃんは理解したのかそれ以上は言おうとしなかった。
「じきにわかるわね」
『(やはり一筋縄ではいかないらしい……)』
「さて、そろそろ私は行こうかしらね」
『え、何処に行くの？』
「……さようならの時が来たのよ、Aちゃん」
突然の言葉に開いた口が閉じない。
透けた祖母の身体が足元からゆっくりと消えていくのが見えて私は祖母を見るが祖母は穏やかな表情を浮かべるだけで何も言おうとしなかった。
『な、なんで……せっかく助けられたのに……』
「言ったでしょ？疫病神を退治するなら婆さんごとって」
『あ……』
加州さんの言葉で全てを思い出す。
疫病神はいなくなってしまった。だからお婆ちゃんも消えなくてはいけない。
「私はいなくなるわけじゃないのよ？還るべき場所に還るの」
「婆さんは霊体。いつまでも現世にいるわけいかないの」
『……お婆ちゃんも加州さんもさっきから言ってること意味がわからないよ！』
私がそう言うと薬研くんと厚くんが私の手を握る。どうやら私が間違っているようだ。間違いを否定されるよりも誰もお婆ちゃんを止めようとしないのが悲しかった。
「私が死んだのはまだAちゃんが中学生の頃だったでしょ？でも私は貴女が高校生になって大人になって誰かと幸せになるまでまだ何処にも行きたくなかったの。誰でもいいからこの願いを叶えてほしかったの」
その時やっと、お婆ちゃんは涙を流した。
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ぬっこ(プロフ) - 胸から刀を出すと言う表現がとても素敵です。続き楽しみにしてます(^-^) (2020年1月15日 21時) (
レス) id: da10b377d5 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 紫鶯さん» ありがとうございます。続きをお楽しみください。 (2019年5月16日 20時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - とっても面白かったです！ (2019年5月16日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月29日 9時
