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  ページ45

梅野が真っ赤になった目でこちらを見上げた。
「…どうして?」
「三島は、目標があると一直線なんだ。周りが見えなくなるって言ってもいい。夢があるみたいだから、それに向かって真っ直ぐ進んでいくんじゃないかな。…それこそ、俺に構ってる暇なんてないくらい」
「…」
梅野は少しの間黙っていたが、やがて唇に皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「──三島さんと仲のいいAがそう言うなら、間違いないね」
「ああ」
Aもつられて笑ってから、梅野に提案した。
「今度の長い休み……そうだな、夏休みとか。二人で旅行に行かないか?泊まりで」
梅野は目をぱちくりとさせてから、うれしそうに言った。
「いいの?」
「多分、俺の両親はいいって言ってくれると思う。梅野も、お兄さんとご両親がOKくれたら、一緒に行こう」
「うん…」
梅野ははにかみながら笑んだ。さっきまで泣いていたのに都合のいいことだと、そんな梅野がいとおしいと思った。

#

それからAと梅野は、たくさんの場所へ行った。

休日が来る度に、二人で夜まで遠出した。
たまに怒られたりもした。

Aが梅野を描いたスケッチブックも、どんどん増えていった。それは言葉無き日記のように、二人の時の流れを刻んでいった。


──思えば、初めて梅野に会ったのも、二年ぶりに梅野に再会したのも、雪の日だった。

今までたくさんの梅野を描いてきたが、彼は雪景色が一番似合う。
真っ白な雪、それ以上に白い清純な何かを梅野は持っている。
雪のように冷たい表情を見せたかと思えば、次の瞬間には溶けてしまいそうなほど甘い笑顔を覗かせる。
雪よりも雪らしい美しさをたくさん持っている。
降り注ぐ雪の下に立った梅野は、雪の精霊みたいだ。

そうだ、きっとそうなんだ。
冬に梅野と出会えたのも、再会することができたのも───彼が、冬に地に舞い降りる、雪の精だったからだ。

たくさんの場所を二人と共に旅して、すっかりくたびれたスケッチブック。
その中で、世界で一番美しい雪の精は、笑っている。

心の底から幸せそうに。

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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね!笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠)(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした! (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2017年10月30日 0時

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