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残夜の雪 ページ43

「聞いてもいい?」
「誰にも内緒よ?…彼にも言ってないの」
(そんなこと、俺が聞いてもいいんだろうか?)
そう思ったけれど、Aは口には出さずに頷いた。
「うん」
「私ね、学校の先生になりたいの」
Aは、意外だとは思わなかった。
むしろ、彼女らしいなと思った位だ。
三島は堰をきったように自分の思いを語り始めた。
「私のクラスの担任の先生がすっごく素敵なの、女性よ。正義感が強くて、生徒の本音と向き合ってくれるの。先生のお陰で、他クラスのいじめまでなくなったの。すごいでしょう?」
熱っぽく語る三島の表情は輝いていた。その瞳は生き生きとしたエネルギーに満ちていて、より彼女を美しく見せた。
「すごいな。自分のクラスじゃないのに?」
「そう。それから、私が学校祭の委員をやっていて悩んでいたときも助けてくれたの。親身に話を聞いてくれて、的確なアドバイスもくれたわ。その時に思ったの。私、この人のようになりたいって…」
「──そうなんだ」
「授業もとても分かりやすくて、苦手だった英語も少し出来るようになったの。ちゃんと生徒によって教え方を変えて、学力を伸ばしてくれるのよ。そんな先生、実は滅多にいないんじゃないかと思う。私もあんな先生になれたらなって…」
「うん…」
「今も色々と勉強をしてるの」
「いいな、夢があるのって」
正直な気持ちだった。三島を見ていて、素直にそう思った。
憧れるものがあって、熱い気持ちでそれに向かっていく。その姿がAの目には羨ましく映った。
「応援してるよ、三島」
「ありがとう」
「羨ましいよ。そういうの」
三島は軽く前のめりになって、興奮したように言った。
「じゃあ、Aも夢を探してみるといいのよ。やってみたいことならあるんでしょう?そこから発展させて考えてみたりするの」
「なるほどな」

それから小一時間も話し込んでから、また会う約束をして三島と別れた。

#

「──それで、話してるときの三島がすごく生き生きしてるんだ。夢があるのって、なんかいいなって」
「…へえ」
(あれ?)
いつも通り梅野の部屋に遊びに行った。
そして昨日三島と会った時の話をしたのだが、今日の梅野はどうも機嫌が悪い。
具体的に言うと、久々に会った三島が夢を語ってくれてその様子がすごく輝いていた、という話をした辺りからだ。
「けっこう話し込んじゃってさ。あいつ、また綺麗になってたし…彼氏様様だな、ありゃ」

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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね!笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠)(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした! (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2017年10月30日 0時

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