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自分の学習意欲に改めて驚いていると、机上の携帯が鳴った。
『今度、会わない?』
簡潔なメッセージ。
三島からだった。
Aは驚いたが、無下にするわけにもいかず、彼女の誘いに乗ることにした。
『いいよ』
「いきなりごめんね」
「別にいいよ。驚いたけど…」
駅から五分の洒落た雰囲気のカフェで、二人は向かい合っている。
昔の待ち合わせはファーストフード店だったのにな、とAは苦笑する。今日来たカフェは、三島のお気に入りらしい。
三島は、ティーカップに角砂糖を落としながら言った。
「私から誘わないと、ずっと会わないままじゃないかなって思ったから」
「…あー、うん」
「やっぱり」
三島からAが距離を置いたのは、彼氏ができた三島に気を遣ったというのもある。
でも最大の理由は、急に大人になった三島がまるで別人みたいに見えたからだ。
子供っぽい気持ちだとはわかっていた。でも中学時代のAにとって、いち女性の目まぐるしい変化は悲しいものだった。
もう二人でバカをやったり、昔のように無邪気に遊ぶことはできない。そう思うと辛くて、Aは自ら三島と距離を置いた。
中学三年生の頃、Aはとても寂しかった。
友人はいるが、三島のように気の置けない人間はいなかった。梅野も、遠くへ行ってしまった。
今になって思えば、絵も勉強も、そんな心の穴を埋めるためのものだったのかもしれない。
「ごめん。俺、あの時はガキだったから」
三島は「ううん」と勢いよく首を横に振った。きれいなショートボブが揺れる。
「怒ってないよ。私も私で彼にばっかりかまけて、今思うと浮かれすぎてた。連絡しなくてごめんなさい。Aのこと、半分忘れていたの…」
「…はは、正直だな」
「ごめんね」
「俺こそ、急によそよそしくして悪かった」
「ううん」
その後は、思い出話に花を咲かせた。
数年の隔たりはもうそこにはなかった。Aと三島は、たくさんのことを話した。
Aが三島の変化を受け入れられたのは、もう寂しくないからだ。──梅野のおかげだ。
過去のことを話し尽くすと、話題は未来のことへと移り変わった。
「だから俺は、まだ夢とかないんだ。やってみたいことはいくつかあるけど」
「そっか。そういうのもありよね」
「三島は?ある?夢」
「う、うん…」
すると三島はちょっと顔を赤くして、Aから目をそらした。
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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね!笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠)(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした! (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2017年10月30日 0時