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梅野はちょこんとベッドに腰かけた。それから、自分の隣をぽんぽんと叩いて示した。横に座れということらしい。
Aはスケッチブックを床に置き、梅野の隣に腰かけた。そっと、梅野に尋ねた。
「眠いか?」
「まだ全然だよ。…ねえ、少し夜更かししようよ」
「うん」
梅野は、申し訳なさそうに切り出した。
「あの、今日はごめんね。夕飯作り手伝わせちゃって」
「いいよ、気にしてないから」
「でも、あの…」
梅野は心配そうに、上目遣いでAを見上げた。
「A、兄さんに何か言われたんじゃない?」
Aはぎくりとした。
「えっ、いや…何も、言われてないよ」
「本当?何も話してない?」
「うん」
もし話したと言えば当然、その内容を問われるだろう。Aはそれを梅野に話すのは憚られた。
梅野のどこが好きなのか訊かれた、なんて、本人の前では恥ずかしくて言えない。
「ふうん…」
梅野が腑に落ちない様子だったので、Aはこれ以上の追及をされまいと話題を変えた。
「あー、そういえばさ、この前の話って何?」
「え?」
「梅野がトマト買いに行く時、瑞季さんが言ってたやつ。この前の話を俺にばらすとか、なんとか…」
梅野は途端に口ごもって俯いた。
「それは…ちょっと。言えない」
「何だよ、気になるだろ?」
Aがからかう口調で言うと、梅野も負けじと言った。
「そっちこそ、兄さんと何か話したでしょ」
「う…まあな」
「ほら、やっぱり」
梅野に嘘がばれたので、Aは仕方なく提案した。
「じゃあ、もうお互い白状しよう。ジャンケンで負けたほうが先。じゃーんけん…」
「あ、待っ…」
Aが出したのはパー。梅野が焦って出したのはグーだった。
「…負けた」
渋々といった様子で、梅野はごく小さな声で言った。
「どこが好きなのって、訊かれたから…それに答えただけ」
「…え」
(ああ、瑞季さん。あの人やっぱり、少し悪趣味だ)
梅野は俯いたままぽつりぽつりと呟く。
「Aのどこが好きなのって、兄さんが訊いてきたから…」
Aはごくりと唾を飲み込んだ。
「何て答えた?」
「それは…黙秘で」
「教えてくれないのかよ」
「…それより、Aは?何を話したの」
「おんなじだよ。梅野のどこが好きなのかって、訊かれた」
それを聞くと、梅野はとたんにため息をついた。
「…兄さんてば。ほんと、趣味が悪い。下世話な話が好きなんだよ、あの人」

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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね!笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠)(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした! (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2017年10月30日 0時

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