夢 ページ37
梅野はかたまった。
｢はぁ…あり得ない。忘れ物が兄さんの特技だとは知ってはいたけど…」
｢お願い。…どうしても行きたくないって言うなら、Aくんにこの前の話をばらしちゃおうかな。あのね…」
梅野は慌てて遮った。
｢あっ、ダメ！待って。行くから。それはダメ」
｢はい、いってらっしゃい」
Aがぽかんとして見ているうちに、梅野はさっさと支度を済ませて出ていってしまった。
｢あの、お兄さん。この前の話って？」
｢あの子がちゃんと行ってくれたから、ナイショ」
二人でキッチンに入って手を洗い、エプロンを身に付けた。キッチンは、リビングよりはまだ日本的なデザインだった。
エプロンは瑞季のが青で、Aが借りたものは黒だった。
｢Aくんのエプロンね、弟のやつだよ」
｢ああ、そうなんですか」
それを聞いてちょっと興奮したのは内緒である。
｢Aくんはサラダに使う野菜を切って。メインのラザニアはこっちでやるから」
｢はい」
多分梅野が買いに行かされたトマトはサラダに使われるんだろうな、と考えながら、Aは黙々とキュウリを切っていた。
瑞季さんもずいぶん静かに作業しているなと思っていると、いきなり声をかけられた。
｢Aくんて、弟のどこが好きなの？」
｢…え？あ、痛っ」
予想外の質問に、Aは思わずさっくりと包丁で指を切ってしまった。
｢あははは、動揺しすぎ…」
瑞季は弟そっくりな表情で笑って、Aに近づいてきた。
(何…)
瑞季がひょいとAの手をとって、血の伝う人差し指を舐めた。ちくりと痛みが走る。
｢あの、何やってるんですか」
瑞季は首をかしげた。
｢何って、知らない？怪我したら消毒にこうするの」
｢知ってますけど、そういうことじゃなくて」
「…｣
瑞季は黙って一秒ほどAの目を見てから、棚から絆創膏を取り出して持ってきてくれた。
｢それで、さっきの続き。あの子のどこが好きなの？」
｢ありがとうございます。…どこ？どこって…全部、好きですよ」
｢へえ？」
始まりは、その美しさに目を惹かれたことだった。
(でも、今は…)
｢弟がよく言うんだ。Aは、たくさん『綺麗だ』と褒めてくれるって」
｢…」
顔から火が出る、とはこのことかとAは思う。
｢俺、どこって言うのは、はっきりとわからないんですけど…」
｢ふうん？」
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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね！笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (
レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠）(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした！ (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺぺこ | 作成日時：2017年10月30日 0時
