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Aはわかっていたが、わざと訊いた。
「あんなことって?」
「僕が…」
キス、したから。
振る雪にかき消されそうな小さい声で、梅野は言った。
「梅野」
彼は俯いている。
「こっちを見てくれ」
「…」
「残念ながら、あんなことで嫌いになんてなりやしない。顔、上げてくれ」
(嫌いになれたなら、この二年間どんなに楽だったか)
Aがそう言うと、梅野はゆっくりと顔を上げた。
(ああ)
なつかしい。
何度も見て、キャンバスに描いた顔。
「相変わらず、綺麗だな」
言う気は無かったのに、思わず口をついて出ていた。
梅野はそれで顔を真っ赤にした。
「そんなこと…」
「今の反応と、あの時のことを俺の都合のいいように解釈してもいいかな」
「…え?」
Aは、きっと大丈夫だと信じた。
梅野も、きっと。
「初めて会った時、覚えてる?」
「Aと、ぶつかった時?」
「うん。あの時、梅野をモデルに誘っただろ?課題だとかなんとか言って。でもあれは全部嘘なんだ。本当は、梅野のことバスで初めて見た時、すごく綺麗だと思ったから…ひとめ見ただけで、絶対にこいつを描きたいって思ったから嘘をついた」
梅野は更に顔を赤くした。
「冗談じゃ、ないよね」
そんな様子が可愛らしくて、Aは笑ってしまった。
「冗談じゃないって。断られるかと思ったら、あっさり了承されてびっくりしたよ」
「ん…絵のモデルって、ちょっと興味があって…」
「梅野さ」
「うん」
「普通、男が男に綺麗なんて言うのは妙だと思わないか?」
「変?うーん」
梅野は首を傾げた。
「いや、絵を描く人って、そういうものなのかと思ってた。モデルを盛り上げる、みたいな」
Aは当てが外れてこっそり苦笑いした。
「…そんなことないだろ」
(これは、言うしかないな。はっきりと)
Aは意を決した。
「だからつまり、…俺は、梅野のことが好きなんだよ」
Aは、ひどく顔が熱くなるのを感じた。
「…へ」
梅野は呆けた顔でこちらを見つめてきた。
心臓がドクドクとうるさい。Aはこんな雪の中なのに、汗をかきそうだった。
「あ、あの、それって…」
「この際白状するが、嬉しかったんだぞ。梅野にキスされたの」
「…」
確実に意味を理解した梅野は、また俯いてしまった。
「梅野、二回言うのは嫌なんだが。顔を上げてくれ」
しかし梅野は動きそうになかった。

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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね!笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠)(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした! (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2017年10月30日 0時

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