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現に約一年後、つまり三年次の秋である今現在、その事など誰も口にしない。皆とっくに忘れていた。
Aも、梅野のことはあまり考えなくなった。相変わらず連絡は取れない上、絵と勉強に夢中になっていたからだ。
ただ、たまに彼を思い出す時があった。
例えば、家で絵を描いていてふと何気なく鉛筆を目にした時。
『鉛筆って、6Bなんてのもあるんだ…』
他愛ない会話が鮮やかに耳元によみがえり、胸が苦しくなる。苦しくなって、ほぼ無意識に押し入れを開ける。ひとつのキャンバスを取り出す。
最初で最後の、彼を描いた絵。
絵なのだから当然だが、相変わらず綺麗だった。
｢どうして｣
(情けないな)
まだ忘れられないのだ。
絵やら勉強やらで気を逸らしても、この気持ちに蓋はできないらしい。
Aはやさしくキャンバスの縁を撫でた。
(もう一度だけでいいから)
──どうか、会わせてくれ。
＃
Aは見事受験に成功し、公立の高校に通っていた。
変わらず美術部だが、三島とは違う高校になった。
高校一年生の、とある冬の朝。
ちらほらと雪が舞っている日だった。
Aは切らした画材を買いにいこうと、大型の文房具店へと歩いていた。
そして、Aは歩くのに苦戦していた。
(くそ…めちゃくちゃ滑るぞ、地面)
つるつるに凍りついた地面を、小股でゆっくりと進む。転ばないよう足の変なところに力を入れているため、段々と痛んできた。
次の一歩を踏み出した、その瞬間。
｢うわっ」
滑った、と思ったその瞬間には、尻餅をついていた。
｢痛え…」
｢大丈夫ですか？」
後ろから男性の声がかけられた。見られていたのかと恥ずかしく思いながら、Aは振り返った。
｢はい。すみませ…」
彼と目が合った瞬間、Aは目を疑った。
｢…えっ？梅野…！？」
｢ん？」
(…いや、少し違う？)
Aに手を差し出した彼は、梅野にそっくりだった。しかしよく見ると彼とは異なっていた。
目は記憶の梅野より切れ長で、口許のつくりが彼よりやや大人っぽかった。髪も黒い。
｢あ、いや。すみません、人違いです｣
(綺麗なのは、変わりないけど…)
Aが転んだ際に落とした鍵を、彼が手渡してくれた。礼を言いながら受けとると、彼はにこっと笑って訊ねてきた。
｢違っていたらごめんね。君…もしかして、Aくん？」
｢え！？なんで、俺の名前…」
｢ああ、やっぱり｣
彼はさらに質問をしてきた。
｢君、出身中学は？」
｢ええと、東中です」
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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね！笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (
レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠）(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした！ (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺぺこ | 作成日時：2017年10月30日 0時
