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Aはゆっくりと起き上がって、梅野の目をまっすぐに見つめた。
「ごめん」
声が少し震えてしまった。
「あの時は、本当に悪かった」
梅野は少し瞠目してから、ほんの少しだけ口許を緩めて言った。
「もういいよ」
「…転校、するって？」
「うん」
「どこに引っ越すんだ？」
「根室」
「…遠いな」
「うん。遠いよ、本当に…」
そう言った梅野の目は、差し込む夕日のせいか潤んで見えた。
「連絡先、教えてくれるか」
「うん」
二人で携帯を操作しながら、小さく会話を紡ぐ。
「たまに、連絡していいか」
「もちろん」
「いつ出発なんだ？」
「早いよ。明日荷物の配送を業者にしてもらって、次の日にはもう行く」
(明後日！──今会いに来て、本当に良かった)
「根室って、北海道のすごい端っこじゃないか」
「そうだよ。親の仕事の都合なんだけど、初めて聞いた時はびっくりした。僕が知らなかっただけで、大分前から話が進んでたらしい」
「そっか」
「ねえ、A…」
「うん？」
Aは呼ばれて携帯から顔を上げた。
すると、すぐ目の前に梅野の顔があった。
それどころか、唇にやわらかな感触があった。
(…え？)
何が起きたのかわからず呆けていると、梅野はAからひょいと離れて鞄を背負った。「じゃあね」とつぶやき、彼は足早に出口に向かった。
(今のって)
キス、された。
Aはどうやらしばらく立ち尽くしていたようで、さっき自分が梅野に何をされたのか気が付いた頃には、とっくに彼は立ち去っていた。
#
重たい灰の空の下、花びらの惑わすが如くひらひらと白が舞う。連日、雪模様である。
外の除雪車の音を聞きながら、Aは自室で一人悶々としていた。
(なんで電話に出ないんだよ！)
冬休みは十日目、別れの時以来Aは何度も梅野に電話をかけているが、一向に出ない。
「あんなことして、いなくなるなって…」
Aはこの十日間ずっと、宿題もやらずに梅野の事を考えていた。
(どうして、あんなこと)
そう。大事なのは、「どうして」である。あの時のあんなことがAのファーストキスだったことは、どうでもよいのである。その「どうして」さえわかれば、Aが日々生み出している得体のしれない抽象画の生産はぴたりと止むのだ。
ただ、何度考えても答えは一つだった。
「あいつも、俺の事…」
考えるだけで恥ずかしくて、思わず頭を抱えてしまう。
「そんな都合のいい事ってあるかよ」
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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね！笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (
レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠）(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした！ (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺぺこ | 作成日時：2017年10月30日 0時
