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キャンバスの中に閉じ込めている。
絵の中の梅野は何一つ口を利かないが、それでもまるで本物と見つめあっているみたいだ。
Aの所為で明らかに描き込みの密度が違う瞳と唇。Aはそれにうっとり見惚れて、それから馬鹿馬鹿しくなる。
(ごめん、梅野)
自己嫌悪。
(単なるエゴだ、こんな絵はただの俺の欲の塊ではないか。こんな絵、今すぐに捨ててしまうべきなんだ)
Aは自分の心の内を梅野に見透かされやしないか、そればかり考えている。額にはいやな汗がにじんでいる。
梅野を描く手を止めて、Aは弱々しく呟いた。
｢ごめん、休ませてくれ｣
｢…｣
Aが立ち上がると、ぎぃ、と朽ちかけた椅子が軋んだ。
梅野が不満げに言った。
｢最近そればっか｣
｢ごめんって、言ったろ｣
言いながらも、いつこの恋慕が見抜かれるのかと気が気でない。
梅野はむっとしたように、ちょっと目を細めた。
｢それ、モデルに対する態度なの｣
Aの心臓の音が徐々に大きくなってゆく。なんて不快な響き。
｢…悪かったって｣
｢何？どうしたんだよ｣
──お前のせいだ。
(…だなんて言えるかよ。お前を描いてる理由がただの俺の慾だなんて)
焦って、Aの口から思ってもいなかった言葉が出てしまった。
｢黙ってくれ。無自覚なのか、いつも。そういうのが嫌われるんだよ｣
言ってから、急に頭に血が上ってきた。
(そうだ、いつも思わせ振りな事をするんだ、こ
いつは。俺にも──元彼女にも。
もしかして、俺の好意に気づいていながらわざと黙っていて、俺をからかっていたんじゃないか？梅野の前の彼女にしたって、本気で梅野を好きだったというのに、簡単に振っていた。最低だ。自分の美しさにも残酷さにも、まるで気づいてないんだ)
どんどん怒りが込み上げてきて止まらなかった。
｢そうやって自分で、いじめられる原因を作ってるんだろ」
いつも本人に思いをぶつけられない分、Aには溜まっていたものがあったらしい。
｢…Aは、そんな事言わないと思ってた｣
Aがはっと気付くと、梅野は悲しいような怒ったような顔をして見ていた。
謝らなくては。Aがそう思った時には、既に梅野は早足で美術室を出ていた。
それから、梅野は美術室に来なくなった。
実は、絵に関しては何の問題もなかった。
絵はもうほぼ完成したようなものであり、Aが梅野の側にいたいがために、わざとだらだらと描き進めていたのだ。
(最低だ)
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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね！笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (
レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠）(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした！ (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺぺこ | 作成日時：2017年10月30日 0時
