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(いけない、気がついては…)
Aの頭に警鐘が鳴り響く。
梅野はそんなAに気づくはずもなく言った。
｢Aさ｣
梅野が吐いた息が白く染まり、消える。
｢僕のこと、一目見て描きたいと思ったって、言ってくれたよね｣
(ああもう…どうしてそんな事をちゃんと覚えてるんだ)
｢僕のどこを見て、そう思ったの？｣
Aは聞かないでくれ、と思う。
逃げ出したいくらい恥ずかしかった。幸いなのは、寒さでこの真っ赤な顔がばれていない事だ。
｢…部｣
｢うん？｣
｢全部…いいって、思った。綺麗だって｣
｢…ほんとに？｣
Aの声は小さく掠れる。
｢誓って｣
｢初めてだ、そんな風に言われたの｣
Aは驚いた。
｢嘘だろう。嫌というほどモテているんだろ？｣
｢うーん、でも、Aみたいに言ってくれる人はいなかった｣
｢ラブレターとかに、なんて書いてあるんだよ｣
｢んー、『ずっと好きでした』とか『小学校の時から見てました』とか、『同じ委員会に入ったとき色々助けてくれたよね、ありがとう。あの時から好きになってしまいました』とか。全然 覚えて無かったけど｣
｢ああ…梅野についてじゃなくて、自分の事について書いてるわけか｣
｢うん。思い返しても、そういうのが多い｣
(ありったけの自分の思いを伝えようとすると、内容が必然的に自分の事になってしまうんだろうな)
悪い事ではないが、それでは埋もれてしまう。だから梅野には届かなかったのだろう。
(なら、俺が)
胸の内のもう一人のAが、Aをそそのかす。
持ちうる全ての言葉で梅野を褒めれば、彼の心はこちらに傾くのでは？
｢梅野は、本当に綺麗だし…それだけじゃなくて、他の誰にも無い良さがあると思うよ｣
Aははっとした。
(男相手に綺麗だとか…ああ、変な褒め方をしてしまった)
｢画家さんにお褒めにあずかって、光栄だよ｣
梅野はいつものように笑った。
(よかった、たぶん嫌がってはない)
むしろその表情は嬉しそうですらあったのだが、恥ずかしさに顔を伏せていたAは、気がついていない。
｢…Aは、画家になるつもりかい｣
｢まさか｣
Aはそんなことを考えたこともなかった。
｢僕、好きだけどな｣
｢え？｣
｢Aの絵｣
｢あ、ありがとう｣
｢勝手にスケッチブックを見させてもらった。僕、絵なんて詳しくないけどさ。すごい、って思う｣
(何だか、こそばゆい)
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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね！笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (
レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠）(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした！ (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺぺこ | 作成日時：2017年10月30日 0時
