検索窓
今日:18 hit、昨日:0 hit、合計:64,790 hit

  ページ2

バスを降りると、激しい吹雪だった。
どこを見ても白。視界はほぼ雪で霞み、先を歩く人間もおぼろげだ。おそらくは自分の後ろを歩いているであろう、あの少年も見当たらない。
(畜生、学年もクラスもわからない)
Aはコートのフードを深くかぶり、ポケットに手を突っ込んだまま歩く。雪を顔に浴びたくないので、真下を向きながら考える。
始めは、彼について聞いて回ろうかとも考えた。しかし覚えているのは真っ黒なジャンパーと、あの美しい、ほんの一目でひとを虜にさせる顔だけだった。
だから、Aは一人一人にたずねる毎に、彼の顔立ちについてあれこれ言わなくてはならないのだ。もし男のくせに熱心に美少年を探し回っている奴がいる、なんて噂が広がれば、あっという間にストーカー呼ばわりだろう。そんな事態は避けたかった。
(どうしたらいい)
同じ中学なのは間違いないから、明日もおそらくあのバスに居るだろうが。
「…熱い」
Aの身体の末端はかじかんでいたが、内部が恐ろしいほど熱を持っていた。吐いた息はことさらに白い。
こんなに心揺さぶられたのは久々だった。
何がなんでも彼をスケッチブックにおさめてやる、と誓った。

#

昼休み、昼食を終え、Aがぼうっと窓の外を眺めていた時。
「よう、少年。何処を見ている」
ひょい、といきなりスケッチブックで視界を遮って来たのは、三島純子だった。
美術部仲間であり、5年目のつきあいである。彼女の大きくて印象的な目はなかなか悪くはないのだが、生えっぱなしの野暮ったい眉がどうにもいただけない。
三島は、俺の目の前でスケッチブックをひらひら振りながら訊いてきた。
「今日も来ないのかい、部室。最近来てないでしょ」
「だって、もう描き終わったから」
「あの木の絵?」
「うん」
「まあ、公募展の絵が終わっちゃったら、するこ とも無いよねえ」
「うん、それなら帰って、ゲームでもしてようかと」
「しかし少年、未来のピカソともあろう君が、ゲームに明け暮れていていいのかい」
「彼ほどの才能は、俺にはないよ」
たしかにAは今まで、周りより良い賞をいくつか取った経験はあるが。
三島はいつの間にかスケッチブックを開いていた。Aの絵を眺めながら、わざとらしく、ふむ、と唸って見せる。
「今は描きたいもの無いの?」
Aの脳裏にあの少年が浮かぶ。「ないよ」と答えようとしたが少し間が空いてしまい、三島にすぐ遮られた。
「ああ、あるんだ」

 →←吹雪



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (70 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
76人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , BL , 男主 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね!笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠)(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした! (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぺぺこ | 作成日時:2017年10月30日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。