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そう言ってアオはさっさと翼を教室から連れ出し、倉庫と化した空き教室へとやって来た。アオはそこにあった大小二つの段ボールのうち大きな方を指さして言った。
「翼こっちお願い」
「えっ」
アオは翼に重い方の荷物を押し付け、自分は軽い方を持ってさっさと歩き出した。
「あっアオ!待ってくれよ」
アオはその一言でぴたっと動きを止めると、くるりと翼を振り返った。アオの髪がふわっと揺れて、天色の瞳がまっすぐ翼をとらえた。
「ねえ、翼」
「えっ?」
いつになく真面目な表情のアオに、翼はごくりと唾を飲み込んで言葉の続きを待った。しかしアオは予想外に軽い口調で言った。
「今度さ、結城くんと俺たちの三人で遊びに行こうよ」
「へっ、あ、ああ。うん。もちろん」
「結城くんと話してるとき話題になったんだよね。今度三人でどっか行きたいねって」
「そ、そっか」
てっきり何か重い話題が来ると思っていた翼は拍子抜けした。

しかしそれ以降、翼はアオに違和感を抱く機会が多くなっていった。
きっかけは翼が鮎川に声をかけられた時だ。
「あの、翼くんってカラオケとか行く?」
「カラオケ?」
名前を聞いたことはあった。人間界の娯楽であり、一人でも複数人でも歌を歌って楽しめる個室なのだと本で読んだ。
鮎川は何やらもじもじとしながら言った。
「今度私たちの仲良しグループ…レイナとユイと行くことになったんだけど、翼くんもよかったら一緒にどうかな?って…」
「ええっと…」
翼は正直迷った。賑やかなのは苦手なのだ。
ただカラオケなるものには興味があったし、何度か助けてもらっている鮎川には好感を抱いていたので、もっと仲良くなりたいと思っていた。
「じゃ、じゃあ…行こうかな…」
途端に鮎川の顔がぱっと明るくなった。
「ほんとう?すごく嬉しい」
「いーな、楽しそう。俺もまぜてよ〜」
「うわっ!」
ぷうと冗談めかして口を尖らせたアオがいつの間に翼の横に立っており、翼は驚いて飛び上がった。鮎川も驚いた顔をしている。
「い、いつからそこに」
「うーん?さっき?」
とぼけた返事に翼が戸惑っていると、鮎川が口を開いた。
「あの、それならアオくんも一緒に行こうよ。たしか歌が好きなんだよね?」
アオはとびきりの笑顔で鮎川に言った。
「覚えててくれたんだ。嬉しいな、ありがとう。一緒に行っていいならぜひ行きたいな。それと…」

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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2019年8月21日 4時

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