【オリジナルBL】やさしい吸血鬼の食事のすすめ (ページ7)

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｢そうなんだ」
｢うん…」
(か、会話が続かない)
翼が必死に話題を絞り出そうとしていると、結城に女子の声がかかった。
｢結城。ちょっとこっち手伝って～」
｢おう」
結城はそっちに行ってしまい、翼は声をかけることができなかった。

色々あったもののシチューは無事完成し、皆でいただけることになった。
｢｢いただきます｣｣
翼はスプーンの使い方がわからず、周りの人間の見よう見まねでシチューを口に運んだが、テーブルに少しこぼしてしまった。
｢これ、難しいな…」
｢あはは、翼くん大丈夫？」
隣にいたボーイッシュな女子がティッシュを差し出してくれたので、翼は何気なくそれを受け取った。
｢ああ、ありがとう」
瞬間、彼女の頬がポッと赤く染まった。
｢う、ううん」
｢｢………｣｣
それを見ていた周りの男子たちが、ひそひそ声で話し始めた。
｢ついに鮎川も落ちたか…。スポーツ一辺倒で、男にはちっともなびかなかった鮎川が…｣
｢イケメン、恐るべし｣
翼はそれを聞きながら、苦い思いでシチューを味わっていた。人間用の食べ物なので、あまり美味とは思えなかった。
翼がちらと結城を見ると、彼はなんだか不機嫌そうにシチューを食べていた。結城は一瞬翼と鮎川を見たが、すぐに目をそらした。
(えっ…怒ってる？)
仲良くなれそうだと思っていたので、翼は少なからずショックだった。

体育の時間になり、生徒たちは体育館に移動した。今日やるのはバスケットボールだ。
アオは大きめサイズのジャージでえっさほいさと準備運動をしながら、笑顔で翼に言った。
｢やっと体を動かせるよ～。楽しみだね、翼！｣
｢そ、そうかな…｣
｢俺、人間界(こっち)のスポーツのルールは大方予習してきたからバッチリだよ。翼は大丈夫？｣
｢ああ、まあバスケなら大丈夫。魔界のテレビでもたまに観るし｣
吸血鬼は基本的に人間より運動能力が高いが、アオはその中でもずば抜けて運動神経がいい。
翼はといえば運動能力はごく平均的なので、普通の人間よりは運動ができる程度である。
とはいえ、女子のハートを射抜くにはそれで十分だった。

試合が始まると、その瞬間から人目を惹いたのはアオだった。
アオは誰よりも速く駆け、軽快に敵をかわしてゴールを決めていく。
｢きゃああああ！かっこいい！｣
｢アオくん素敵…｣
アオは味方への配慮も忘れない。敵の妨害に徹しシュートを譲ったりと、味方の見せ場もきちんと作っていた。