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｢えー。それは難しいなあ｣
笑う兄の声を背に、梅野はチョコを持って家を出た。
瑞季に押されて、梅野は勢いのままAの家の前までやってきた。
しかし、梅野はもうすでに帰りたくなっていた。
｢うう｣
(こんな風にAの家に来たの、初めてだ…。いつもAが僕の家に来てくれてたから)
静かに降り続ける雪が、梅野の肩に積もっていく。
｢…寒い｣
梅野は、自分にチョコを渡しにきてくれた女子たちのことを思い出す。
彼女たちは、どれ程の勇気を振り絞り自分の元へやって来たのだろうか。
今になってようやくわかる思いで、梅野はぎゅっと拳を握りしめた。
(よし)
梅野は、そっとAの家のインターホンを押した。
居心地の悪い沈黙が続いたが、しばらくしてから応答があった。
『はい、どちら様ですか』
Aの声だったので、梅野は緊張から声がうわずってしまった。
｢え、えっと…梅野…です｣
『えっ！？ちょっと待ってて』
梅野がそのまま待っていると、やがて目の前で勢いよくドアが開いた。
｢梅野？どうした？｣
若干息を切らした様子で、Aが訊ねてきた。彼が急いで出てきてくれたことを思うと、梅野はほんのり嬉しくなった。
｢あ、あのね、僕…｣
｢外寒かっただろ、耳まで真っ赤じゃないか。とりあえず上がって｣
Aは梅野の肩や髪に積もった雪を払って、家へと招き入れた。その暖かい手は、Aと再会した日のことを梅野に思い出させた。
(あの日のAも、こんな風に僕に積もった雪を払って、髪を撫でてくれたっけ…)
梅野は、Aの手が好きだった。本人にそれを言ったことはないので、気付いていないかもしれないが。
｢手、冷たいな｣
爪が大きくて、やや骨ばっている、梅野よりも少し大きな手。
その手が、梅野の両手をぎゅっと包み込んで暖めた。
梅野が握られた手に照れて黙りこんでいると、Aがそっとその瞳を覗きこんだ。
｢…で、どうした？今日は。もしかして、普通に会いに来てくれたとか｣
｢あ…えと…あのね…。じゃあ、とりあえず、一から話すね｣
｢それなら、俺の部屋に行こう。…あんまり綺麗じゃないけど｣
｢あ、うん。お邪魔します｣
Aの部屋は、確かに綺麗とは言い難かった。
使い古した大きな机の上には、大量の画材やスケッチブック、CDが散らばっていた。本棚には、梅野が見たことのない本がびっしり詰まっている。
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すらいみーる@元もちづき(プロフ) - 以前からぺぺこさんの作品を読ませて頂いているのですが、すごくおもしろくて更新とても楽しみにしてます！！！これからもぺぺこさんの一ファンとして応援してます！ (2018年9月11日 23時) (
レス) id: 3b52443fef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺぺこ | 作成日時：2018年4月14日 21時
