・（S） ページ35
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sho side
あの旅館に着いて、外へ出ればジンの声がした。
まさかとは思ったけど、そのまさか。
柚莉ちゃんを引き連れて同じ場所に来てた。
『まじかよ〜俺らだけの場所だったのに〜』
神「いや俺らも出逢いの場所だかんね？笑」
『あ、そっか』
神「そこ重要なんですけど」
『結局ダブルデートだな』
神「元々その予定だろ」
「お前が勝手に抜け駆けしようとするから」と、付け足されていつもの言い合いが始まる。嫌な空気1つもなくお互い笑ってる。
『で、どうなの』
神「なにが」
『付き合うの？付き合わないの？』
神「付き合うっしょ｣
『おぉ！流石っす』
神「柚莉ちゃんどう思ってるかな〜」
『好きだろ』
神「いや、ファンとしての " 好き " かも知んないじゃん」
『それは2人になったら聞いてみろよ』
神「うん」
ジンがこんなにネガティブ発言するのは珍しい。
ほんとに緊張してんだな。
旅館に入って、露天風呂付きの部屋が2つ空いてるって言われて、よっしゃ！ってなったんだけど、柚莉ちゃんが 「ちょっと初対面で2人は……」 と言い出して、すかさずAも「そうだよ！男女分かれよ！」って……嘘……Aとお風呂入りたかったのに……イチャイチャしたかったのに……
神「なあ俺そんな軽く見える？」
『は？』
神「何もしないのに……」
『あ、気にしてんの？』
神「いやショックだろ普通に」
『まあ俺もそう言われたらショックだな』
神「しかも初対面じゃなくね？3回目じゃね？」
『緊張してんだよ！女ってそういうの恥ずかしいんじゃねーの？』
神「俺は一緒にいたかった……」
『だからそれも俺に言うなよ気持ちわりぃな』
神「しょお〜〜〜」
『あーもう分かった分かった離れろ！』
なんでここまで来てお前とイチャイチャしなきゃなんねーんだよ。
ジンはお湯をバシャバシャかけてくるし、引っ付いてくるし俺はAとイチャイチャしてえのに！
俺にじゃなくてちゃんと、柚莉ちゃんに思ってること言えよ！
……って、俺もそうだった。
臆病で、怖がりで、自信がなくて
でも " 好き " という気持ちは溢れていく。
声が聞きたくて、声を聞いたら会いたくなって。
ずっと一緒にいたくて。
止まることを知らないこの恋は、最初で最後だ。
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作者名：詠夢
| 作成日時：2021年5月25日 22時
