あなたに溢れる日常を - short? -

＊ 可愛いやつ “ 冠×貴 ” ページ9

. 冠城side




サイバーセキュリティに、溜めに溜めた荷物を置きに行った帰り、捜査一課に向かったAを迎えに近くまで来たら、最近になって聞き慣れた声が聞こえ思わず足を止める。


「そういえばさ、冠城さんとは、順調？」


『……この流れでそれ、聞く？』


「いや、気になって？」


『……やだ、言わない、慶二くんが口軽い事知ったから』


何がきっかけで、こんな話を2人がしているのかは不明だけど、内容によっちゃ俺にとっては都合がいいかな。って思い、壁に背をつけて少しだけ聞いてみることにした。


ぶっちゃけ、Aは本当に俺の事が好きなのかよく分からない。仕事とプライベートは分けたいって言ってたけど、言葉通り本当にきっちりと分けてるし。


家では、多少は可愛いけどそれ以外はさっぱりだし。惚れやすいし、好きになったら好きで居続ける。そんな事を、右京さんに聞かされたけど、よく分からない。


『冠城さんね、優しいの。すっっっごく、優しくて、たまに怖いの』


「怖い？」


暫くの沈黙の後、Aから出た最初の言葉は、優しいけど怖い。
怖いってなんだ、俺、怖くしてるっけ。


『優しすぎて、怖いの。さすがは、プレイボーイだったからなのか、手に取るように私の感情が分かってるらしくて。』


「まぁ………女の人の扱い、慣れてそうだもんなぁ、あの人」


おいおい、2人してプレイボーイだからって言い方ないだろ。
そりゃ？女性と付き合うってのは、色々やったけど、やりましたよ。


でも、Aまでそれを言うのは無しだろ。それに、手に取るようにっていうのは、彼女の喜怒哀楽が分かりやすすぎるんだよ。じゃなきゃ、さすがの俺でもAは……


『それとね、料理が上手くて、話が面白くて知的な人で……一緒にいると、自然と笑顔が零れるの。どんなに辛くても、悲しくても、あの人の笑顔を見るだけで、全部吹き飛んじゃう。』


…………彼女は、どうやら、ツンデレらしい。しかも、ツンが多いやつ。
踵を返し、素早くスマホに文字を打ち込めば特命に戻ってくる。


分かりやすい喜怒哀楽を取れば、Aが何を思っているのかさっぱり、そう思ったけどさっきの彼女の言葉の雰囲気で、そういうのがどうでも良くなった。


口に出さないだけで、あんな事思ってたんだ。色々言ってた事もAだけ聞かなかった事にしてあげよう。


俺が送った文に既読を付けて、こっちに向かってるであろう彼女を待つべく、荷物を纏めた。

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