＊ 2.5 ＊ ページ15
.
進級して早々に、私の苦手なパソコンの授業があって、その後は2時間連続の古文で教科書を忘れたから、菊池に借りに行ったのに、先生にバレて怒られて…。
それに、怒られていたせいで日替わりランチが売り切れて、泣く泣く普通のお弁当を買ったからお財布が痛い。
トホホって感じだけど、音羽くんの元に急ぐために、階段を1段飛ばしで屋上の扉前に着くと、息を整えて取っ手に手をかける。
思い切り開ければ、ベンチに座ってスマホをいじる彼がいて、その姿に自然と私の口角が上がった気がした。
『音羽くん！ごめん、お待たせ』
「……遅っ」
『だから、ごめんってば…って、聞いてよ、菊池に怒られてたせいで、日替わり買えなかったの』
「そりゃ、残念」
スマホから視線を逸らして、私の姿を捉えるなりほんの少しだけ、彼の口角が上がったように見えて、調子に乗って買えなかったことを言えば、すぐに真顔に戻った。
『時間もあれだし、食べよ……いただきまーす！』
「いただきます」
これ以上、音羽くんを待たせちゃいけない。って思った私は、お財布を横に置いてお弁当の蓋を開けながら言えば、小声で彼も呟いて蓋を取る。
「…なんか、その弁当、量多くね？」
『これ、体育会系の人がよく食べてるやつなんだよね。
ご飯とか、絶対大盛りだと思う。』
「だと思うよ。食えんの？」
『分かんないなぁ…でも、今日部活あるし……』
「でも美味そう」
『えっ、それは音羽くんのお弁当もでしょ！凄い美味しそう！親の手作りとか？』
二段弁当で、1番上の段にある彩豊なおかずを見て声を上げれば、音羽くんは表情を曇らせて黙り込む。
……なにか、やばい事聞いちゃったのかな…もしかして、あんまり関係良くない、とか？
『ごっ…ごめん……答えにくいこと、聞いちゃって……』
ずっと黙り込んだままの彼だから、謝らなきゃって思いで言葉を繋げて、ご飯を食べようと手をつけた時、
「俺の母親、小6の時死んだ」
『…………え、』
「元々身体弱くて。父親は物心ついた時から居ないし」
『…それじゃあ……もしかして、一人暮らし…？』
「いや。寮だよ。まあ、一人暮らしか」
思わぬカミングアウトに、開いた口が塞がらない私。
それを見かねたのか、音羽くんは困ったように眉間に皺を寄せて、手に持っていたお弁当のおかずを勝手にとって食べて……
『あっ、私の唐揚げ』
「口開けてるのが悪い。」
そう言って、笑みを見せてくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マナ - 作品を参考してよろしいですか？ (2022年1月24日 18時) (
レス) id: d0a320b2d2 (このIDを非表示/違反報告)
空うさぎ(プロフ) - 駒ノ音〜Another〜作って下さりありがとうございますっ…ずっと2人の出会いが気になっていたので嬉しいです！更新楽しみにしてます՞⸝⸝ > ̫ < ⸝⸝՞ (2021年10月4日 19時) (レス) id: a700536b31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：どこかのムスメ | 作成日時：2021年10月4日 17時
