☆ ごじゅうよん ページ9
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「D、何鍋にする?」
ある程度ゲームをして、ちょうどいい時間になったからということで、遊んだものを一緒に片付けながら聞いてきたAさん。
鍋かぁ……和風だしもいいし、チゲも美味しいだろうなぁ……あ、カレーもありか、チーズなんか入れちゃって。んー、タラ鍋もいいなぁ、迷うなぁ
「……あははっ、ははっ」
「?やなぎー?」
「あぁ、ごめんごめん…笑 いや、何鍋にするか、悩んでるんだろうなぁって思って。顔、凄かったよ、笑っちゃった」
「あっ、いや、これは、その……」
「あはは、お鍋、色々あるもんね?迷っちゃうよね。…じゃあ、Dが食べたいお鍋書き出して!あみだくじで決めよ!」
「……へ?あみだ?」
「そうそう!楽しそうでいいじゃない!かみやとか孝くんとかとも、迷った時はそれで決めてるんだ。だから……あ、あった!ほら!もう作ってあるの!」
「あみだ、楽しいもんね。でも、神谷さんとかがやってるってイメージなかった」
「まぁ、あんまり思い浮かばないもんね。私も、最初は物凄く嫌な顔されたよ。でも、今じゃ向こうがノリノリで」
可笑しそうに、あみだが書かれた紙とペンを俺の前に出すAさんは、楽しそうに書いて書いてと迫ってくる。
その様子が、普段の彼女と全く違くて胸がポっと暖かくなるのを感じながら、食べたい鍋の候補を書いていく。その間、Aさんは見ないように両目を両手で塞いで、ソファの上で膝を抱えていた。
5つの鍋を書き、下を丁寧に折り見えなくすると未だに目を閉じたままのAさんの、その姿をどうしても収めたくて、こっそり携帯を手に取り消音にしてカメラに収めた。
「やなぎー、書けたよ」
「あっ、ほんと?じゃあ、目を開けまーす……はい!」
「どうぞどうぞ。」
「んじゃあ、辿っていきまーす。今日はぁ……4にする!」
そう言って、4と書かれたところからAさんの細い人差し指が線をなぞっていく。
チラリと横顔を見れば、ワクワクしたような顔で何が出るかなー?なんて言っていた。
「(可愛い……好きだよ、Aさん)」
自分の気持ちを再確認しては、その横顔を心に刻もうと目を閉じる。
「……よし!辿り着いたよ!」
「何かな何かな?」
「開けます!せー…の……!!」
辿り着いた先の鍋の味に、Aさんはパッと俺の顔を見ては満面の笑みで親指を立て頷いた。
「了解!!任せて!!」
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作者名:V-GIRL | 作成日時:2019年10月21日 10時