声と声 - 共演編 - (ページ6)

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☆ ごじゅういちページ6

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オーディションも終わって、次の仕事やまだ残っているオーディションに向かう同業者を見送り、私は車に乗り込む。
有馬ちゃんは、次の現場に間に合うか…なんてブツブツ言ってる。

そんな彼を横目に、候補者一覧の履歴をもう一度眺める。大御所と言っても過言じゃない三木さんや石田さん、ベテランとして着実に地に足をつけてるかみやとかお杉達の演技は本当に凄かった。
一人一人の熱意とか思いが、ひとつの役としてヒシヒシと伝わってきた。

でも、あの男だけは違った。まぁDの事なんだけど。
彼が発する言葉一つ一つが、自然とストンって落ちてくる。それに、彼と一緒にこの作品を作っていきたい、そう初めて心の底から思えた。こんなこと、今まで無かったし、まさか本当にこんな感情があるなんてって思った。

「ねえ、有馬ちゃん」

「ん？どした」

「今日のオーディション、元声優から見てどう思った？」

「んー、そうだなぁ……三木さん達はさすがベテランって声だけ、佇まいだけで伝わってくるものがあった。でも、あの八代拓真はそうじゃないんだよなぁ……声質とか雰囲気諸々含めると、俺的には下野さんか小野Dさんかな。」

「あー、やっぱり。私も聞いてて小野くんいいんじゃないかなって。あの人と一緒に仕事がしたいって、思ったんだよねぇ」

「へぇ～、珍しいじゃん？Aがそんなこと言うなんて」

「なんか、しっくり来たんだよね。この人の隣で演技をしたらどうなるんだろうって、ワクワク？的な気持ちがね」

「じゃあ、監督方も小野Dさんのこと気にいるといいな。」

「そうだね。もしかしたら、違う人を出してくるかもだけど」

「かもな。……あ、あともうすぐで着くからな。喉のケアしっかりしとけよ」

「はーい」

外していた、喉潤いマスクをもう一度付けてレコーディングに向けて準備を整える。
耳にイヤホンをさして、ただの音源を流せば通知があることに気付く。
誰からだろうと思い、見てみればオーディションが終わって次の現場に向かう途中なのか、ホームで台本を持ち自撮りをするDの写真とメッセージが。

小野Dくん今日はお疲れ様でした。俺の演技、どうでした?良かったですか?
このお仕事でやなぎーの横に立ちたいな。
小野Dくんじゃあ、俺、次の現場頑張ってきまっす!やなぎーも、頑張ってください

元気で可愛いなぁ……なんて思いながら、返信は後でにしようと電源を落とした。