+ 156 + ページ7
.
元気が出るように、涼香の頭をグリグリ押せばようやく笑顔を見せてくれる。
やっとひと安心できる、なんて感じて笑みを零せば医局の扉の向こうに人影が見えた。
ちょっと、と近くに寄れば、やっぱりって思った人がいた。
「A先生」
『っ……喜多見チーフ
その、すみません、立ち聞きするつもりは無くって、あの……』
「分かってますよ。たまたま来たら、って感じだったんですよね」
『……戻ります、私。』
紺のスクラブを着てるあたり、当直なのか俺から視線を逸らして立ち去ろうとするから、慌てて腕を掴んでそれを阻止する。
意外にも、抵抗を見せないからそのまま中へ連れ込むと、紙袋から洗濯物を出していた涼香が驚いた顔で近寄ってきた。
「Aさんっ！！」
『…涼香ちゃん』
「…ごめんなさい、Aさん。私、Aさんに迷惑をかけちゃって……」
『……なんの事？』
「え……Aさん、ネットの記事、知らないの？」
俺と同じ、突然頭を下げられた事で、ようやく顔をあげれば不思議そうに、首を傾げるA先生。
涼香は涼香で、慌てたように今話題になってるそれを見せれば、ようやく理解したのかのんびりと、あぁ…なんて呟く。
『私に関する記事なら、それ言ったの涼香ちゃんじゃないよ。』
「……え？」
『ほら、私って公安に目をつけられてるじゃない？その事が問題になって、根掘り葉掘り聞かれてつい、言っちゃったんだよね。』
「そんな……違うよ、私、御子柴さんに聞かれたもん。」
『いつの事？』
「3日前……だったかな」
『あー、その日だよ、私が根掘り葉掘り聞かれたの。
多分、私が言ってることが合ってるか確かめるために聞いたんじゃないかな？
だから、涼香ちゃんは何にも心配しなくても大丈夫よ』
タブレットを机に置き、そのまま涼香の両手を取れば小さく微笑む。
いつもと違う様子に気付いたのか、すぐに庇うような態度を見せるA先生に、俺は内心ホッとする。
きっと、俺がいくら言っても心は晴れないだろうし、その分先生に言ってもらったほうが、確実に元気になると思うから。
「…じゃあ、私のせいじゃない……？」
『絶対違う。だから安心して？』
「でも、音羽先生の事は…」
『あー、あの人元々言う気満々だったから、喜多見チーフの件も、涼香ちゃんのせいじゃないと思う。』
だからそんな顔しないで、と何が言いたげな涼香に、笑って言って見せた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 608人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マナ - タイトル(題名)とかすごいのですが…どうやって書いていらっしゃいますか？ (2021年9月18日 21時) (
レス) id: 223f5e45fc (このIDを非表示/違反報告)
空うさぎ(プロフ) - マナさん» 小説を読んでいる時に右端にあるヘルプという所を押すと書き方が書いていますし、小説の書き方を載せている方も居るので検索してみてください。 (2021年9月14日 22時) (レス) id: a700536b31 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 音羽先生大好きです！更新楽しみにしています！最高です！ (2021年9月14日 15時) (レス) id: e16d10e994 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 空うさぎさん» えっと……？ (2021年9月14日 13時) (レス) id: a03c89d697 (このIDを非表示/違反報告)
空うさぎ - マナさん» あの…書き方についてはヘルプの所に書いてあると思います…！ (2021年9月14日 11時) (レス) id: a700536b31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：どこかのムスメ | 作成日時：2021年9月4日 18時
