+ 70 + ページ21
.
『おはようございます』
数日間、MERの医局に顔を出せていなかったから、息抜きにでもと、挨拶しながら入れば、弦巻ちゃんが気まずそうに私を見てくる。
まぁ、無理もないか。私だって、あの空気を作った張本人だし、ちょっと避けてたくらいだから。
「Aさん！おはようございます！」
蔵前ちゃんとミンちゃんが、嬉しそうに声をかけてくれるから、一瞬笑みを浮かべて席に着くと、横に居た尚ちゃんが訝しげに私を見てくる。
しかも、彼以外にも、喜多見チーフが首を傾げてじっと見てくるから、なんですかって。
「駒場先生、睡眠は」
『睡眠？』
「隈、出来てますよ。寝れてます？まさか、救命に泊まり込み…なんて、言わないですよね」
鋭く言い当ててくる彼らに、苦笑いを浮かべてポケットから鎮痛剤を出す。
もはや水なしでも飲まなくなったそれを服用しながら、突き刺すような尚ちゃんの睨みから逃れようと、救命に戻ろうとした時、2人分の足音が。
「駒場」
『……御子柴先生、どうしてここに』
「話がある。…正確には、彼が、だがな」
医局長が後ろに下がれば、スーツ姿の男性が、右手に包帯を巻いて、顔を俯かせていた。
『……それで、貴方は』
喜多見チーフと、音羽先生だけがいる医局内で、私の横に医局長。正面に座る青年に声をかければ、岩田彰生と、呟いた。
「あの……彼女は…未知は、本当に、あと数週間なんですか」
『…富澤さんの、身内の方か…何か？』
「婚約者だそうだ。富澤さんのな」
『……そういえば、富澤さん…1度だけ、忘れられない人がいるって言ってました。
あなたのことだったんですね、それって』
「後悔、してるんです。いま、ものすごく。
末期癌って分かって、逃げ出した自分がいました。でも、やっぱり忘れられなくて、未知のこと。
彼女の、母親から電話を貰った時、居てもたっても…居られなくなって」
ゆっくりと話し出した彼は、顔を歪めて今にも泣き出しそうだった。
……無理もない。結婚直前に、いつ居なくなるか分からない、そんな事聞かされたら、誰だって逃げたくなる。
『お気持ち、お察しします。』
「……残忍な人だって、思わないんですか？」
『なぜ？』
「逃げて、また戻ってきて……」
『残忍だなんて思いません。
むしろ、戻ってきたあなたは、優しいと思います。強いと、思います。』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 419人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
どこかのムスメ(プロフ) - Riaさん» コメントありがとうございます！そうですよね、私も駒場さん好きなので、なかなかないなら作ってしまえ！ってノリで作ったので、そのように言ってくださると作った甲斐がありました笑 (12月2日 10時) (
レス) id: c3671cae8b (このIDを非表示/違反報告)
Ria(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございます 駒場室長が出てくるお話は中々ないので室長ファンとしては凄く嬉しいです (12月1日 12時) (レス) @page11 id: b18326fb22 (このIDを非表示/違反報告)
どこかのムスメ(プロフ) - 青髪さん» 読んでくださってありがとうございます！私が見ていたドラマからなので、偏ったりがありますが……。四宮先生は出したい欲があるので、楽しみに待っていてください！他に、出して欲しいキャラとかいたら、コメントに書いてくだされば出すかも…なので、お気軽に！ (2021年8月18日 22時) (レス) id: ca5bf8a95f (このIDを非表示/違反報告)
青髪(プロフ) - 初めまして。一気にIから読んでしまいました…！！ちょいちょい医療ドラマの先生とか出てくるのが楽しみな自分もいます…！！コウノトリから鴻鳥先生や四宮先生も出てくる事を祈ってます！！更新待ってます！！！ (2021年8月18日 21時) (レス) id: 8f192a2bc7 (このIDを非表示/違反報告)
どこかのムスメ(プロフ) - sho.kano0129さん» 藍沢先生……考えますね、楽しんでくれてるようで、こちらも嬉しいです！笑 (2021年8月17日 11時) (レス) id: ca5bf8a95f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：どこかのムスメ | 作成日時：2021年8月13日 12時
